ロシア語アレルギーが進んでいく中で…
この現場付近に住むオレーナさん(44歳)は、空爆で父親を失った。爆風の影響で自宅も損壊し、台所は食器などが散乱してぐちゃぐちゃになっていた。オレーナさんは、ロシア軍に対する怒りを、こう表現した。
「ロシア語で話を聞くと嫌になります。映画を観ている時に、ロシア語が出てくると不快です。ロシア関係のニュースは10秒も観ると我慢できなくなります」
特に被害者の遺族は、ロシア語に対する「アレルギー」が今まで以上に増幅している。
キーウを中心に「脱ロシア語」への動きが加速したのは、2014年のクリミア半島併合がきっかけだ。
ロシア軍による全面侵攻が始まる前の今年1月半ばには、ウクライナ語以外で書かれた広告を禁じる法律が施行された。そして戦争勃発によって、キーウではロシア語の使用頻度が明らかに減ったと、リュバさんは指摘する。
「カフェや外出時の人混みで聞く言葉は圧倒的にウクライナ語が増えました。戦争前は半々ぐらいだったのが、5月に入ってからは明らかにロシア語が減り、今は9割ぐらいがウクライナ語ですね。
友達からスマホに届くメッセージは全てウクライナ語に変わりました。私も知らない人と話をする時は、ウクライナ語にしています。被害者の気持ちを考えるとその方が良いです。戦争が始まって以降、ウクライナ語かロシア語かの選択はとても大事になっています」