約50年間で社会保障費は22倍以上に

――政府・与党は、食料品の消費税を2年間限定で現行の8%から1%に引き下げる減税案の検討に入りました。公約の「ゼロ」ではレジのシステム改修に約1年かかり早期実施が困難なため、「1%」とすることで来年4月からの導入を目指しています。食品の消費税を1%に引き下げた場合、税収は年間約4.4兆円減少するとみられていますが、どのような影響があるでしょうか?

「消費税減税も、市場に与える影響は『積極財政』と同様です。減税したら穴埋めのために国債を増発しなければなりません。そうすると、ただでさえ危うい状況にある日本財政への信頼がさらに落ち、金利上昇と円安が悪化します。

物価は上昇し続けるため、消費税減税による物価下落は、円安による物価上昇によってすぐに打ち消され、生活はより苦しくなるでしょう。消費税の代わりに、もっと恐ろしい『インフレ税』が来るだけです。世の中にうまい話はありません。

消費税は極めて安定した財源です。なぜOECD加盟国のうちアメリカを除くすべての国が消費税を導入しているのか、その理由は高齢化による社会保障費の増大です。

『福祉元年』と言われた1973年度に6兆2640億円であった社会保障費は、2021年度には138兆7433億円と、22倍以上に増えました。そして、その増加は65歳以上人口の増加に比例しています。これは、社会保障費が主として高齢者向けのものだったからです。

「日本の通貨崩壊は避けられない」弁護士・明石順平氏が警告する“サナエノミクスの落とし穴”_2

約50年間で社会保障費が22倍以上増えたにもかかわらず、日本は必要な増税を怠ってきました。国際的に見ると、日本は法人税は高いけれど付加価値税、所得税が著しく低い。

法人税収、付加価値税収、所得税収の対GDP比について見ると、2019年の日本の法人税収対GDP比は38カ国中8位で上位に位置しますが、付加価値税収対GDP比は34位、所得税収対GDP比は26位であり、いずれも下位となっています。

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この3税を合計した順位で見ると、日本は38カ国中32位です。このように、日本は先進国の中でも極めて税負担の軽い国ですが、国民の意識は逆となっています。不当に重い税負担を課せられていると思っている国民が大半を占めているのです」

――日本の税負担は、世界的に見て下位にあるのですね。負担と給付のバランスの差を埋めているのが国債ですが、国債の暴落はありえるのでしょうか?

「国内の長期金利の指標となる新発10年物国債をはじめ、今すべての国債の金利が上がっています。国債の金利が上がるというのは、国債の価格が下落しているということ。つまり、日本の国債がどんどん信用を失っているというわけです。

国債の信用というのは、『きちんと税金を取ってそれで返します』という建前によって成り立っています。だから『減税します』というのは、『まともに返す気はありません』と言ってるのと同じですので、当然、信用は失われます。