マリーヌ・ルペンは女性の味方?

女性の国民連合支持が増えた背景には、マリーヌ・ルペンが党首就任後に進めた「正常化」戦略も関係している。とりわけ、ルペン自身の女性性がもたらす比較的穏健なイメージは、極右への投票に伴っていた心理的ハードルを下げ、女性有権者にとって国民連合を以前ほど忌避すべき対象ではないものとして見せる効果を持った。

マリーヌ・ルペンは党首就任以降、大衆的な意見を取り入れながら、党の言葉遣いや争点設定を調整した。これにより、女性有権者に忌避されやすい論点は前面に出されにくくなった。2017年大統領選では、フランスの大手世論調査会社Ifop出身で、世論分析に通じたダミアン・フィリポが陣営に加わり、キャンペーン文書や論拠作成を担っていたことからも、ルペン陣営が世論調査や世論分析を重視していたことがうかがえる。

その一例が、中絶をめぐる立場の変化だ。国民戦線/国民連合は長年、反中絶的な立場を掲げており、マリーヌ・ルペン自身も2012年には「安易な中絶」を批判する表現を用いていた。しかしその後、こうした論点は少なくとも表向けには次第に抑制されるようになる。

さらに、2017年の大統領選の時期を境に、ルペンは「母」であり「現代的な女性」であるという自己演出を強め、「女性の大義の擁護者」としてふるまうようになった。この変化の背景として、同時期のフランスで起きていた二つの動きに注目する必要がある。

第一に、同性婚反対運動を契機とした保守女性運動の再活性化と再編である。第二に、「女性の安全」を移民やイスラームへの排除と結びつける、フェモナショナリズム的言説の高まりである。

文/森野咲