極右ジェンダー・ギャップ

女性は男性に比べて極右政党を支持する傾向が低いという見方は、かつて広く共有されていた。1980〜90年代以降のフランスでは、極右への投票行動において明確な男女差が見られ、男性は女性の約二倍の割合で国民戦線(現・国民連合)に投票していた。

女性が男性に比べて国民戦線を支持しにくいというこの傾向は、フランス型の「極右ジェンダー・ギャップ」として、重要な特徴とされてきた。このような差が生じた要因としては、主に以下の四点が指摘されている。

第一に、労働市場における性別分業のため、移民労働者との競合が男性により集中しやすかったことが挙げられる。グローバル化や産業構造の変化、移民労働者との競争によって打撃を受けやすかったのは、サービス部門に多く従事する女性よりも、工業部門やブルーカラー職に多く従事する男性であった。そのため、男性のほうが反移民や反グローバル化を掲げる政治的訴えに引きつけられやすかったと考えられる。

第二に、キリスト教的慈愛にもとづく宗教的倫理が、女性により強く作用してきたということがある。フランスでは、カトリック教会が極右の反平等主義や反普遍主義を批判してきた。そのため、とりわけ宗教実践の度合いが高い高齢女性において、キリスト教的倫理は極右支持を抑制する要因として働いたとされる。

第三に、ジェンダーロールにもとづく社会化が、女性に過激な政治的選択肢を避けさせる方向に作用したことが挙げられる。女性はしばしば、規範への服従、協調性、攻撃性の抑制を重視する形で社会化される。そのため、急進右派に結びつけられてきた過激主義や暴力性、既存の政治規範から逸脱するアウトサイダー的性格は、女性有権者に忌避感を抱かせてきた。

最後に、第三の点とは矛盾するようだが、フェミニズムの浸透が、とくに若い女性の価値観を変化させ、保守的なジェンダー観を掲げる極右から距離を取らせたことも重要である。

フェミニズムが提示する解放的な価値観は、極右がしばしば重視する伝統的な家族観や性道徳観とは両立しにくい。そのため、女性の権利や自律性を重視する層にとって、極右は支持しにくい政治的選択肢として認識されてきたのである。

以上のように、女性が極右を支持しにくいとされてきた背景には、経済的利害、宗教的価値観、ジェンダー規範、フェミニズム意識が複合的に作用していた。こうした説明はいずれも、極右が女性にとって距離を置きやすい政治勢力として認識されてきたことを示している。では、そもそも極右政党の側は、女性をどのように位置づけてきたのだろうか。