「どういう育て方をすればよかったんだろう」
話を聞いていて、私が心配したのは母親のほうだった。
彼女は診察中、終始緊張をしていて顔には疲労感が色濃い。きっと日々、息子のことで心をすり減らしていたのだろう。
蓮君の診察がひと通り終わったあと、母親単独の診察時間を設けることにした。
「お母さんのほうは体調を崩されていませんか?」
そう促すと、堰を切ったように言葉があふれた。
「あの子が騒ぐと頭が真っ白になってしまって……いつ大きな声をあげるのかビクビクしています。義母から『毎日同じ服着て、どういう育て方してるの』と責められるんです。
蓮が寝たあと、わけもなく涙が出て、何が悪かったんだろうって。どういう育て方をすればよかったんだろうって、ずっと悩んでいます」
溜め込んでいた感情とともに涙が頰を伝う。
子どもに発達障害の傾向が見られると、自分を責めてしまう親は少なくない。中には自責の念で気持ちが沈み、眠れなくなり、うつ状態になる人もいる。
「お母さんの育て方で蓮君に発達障害が出たということは絶対ありません」
私はなるべくゆっくりした口調で言葉を重ねる。
「遺伝的な要因の関与も考えられていますが、はっきりと原因はわかっていないんです。なのでお母さんが自分の育て方を責める必要はないですよ」
差し出したティッシュボックスを「すみません」と受け取った彼女が涙を拭う。













