桑田佳祐が語った「日本の音楽界を大きく作り変えた」西城秀樹への敬意

1995年夏、横浜みなとみらい21臨港パークにて開催されたサザンオールスターズのコンサート『スーパーライブ in 横浜 ホタル・カリフォルニア』で、サプライズ・ゲストとして出演した西城秀樹は、代表曲の『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』を披露した。

終演後にゆっくり話ができたという桑田佳祐は、偶然にも西城秀樹と学年が同じだった。

のちにロックの先駆者に対する感謝の思いを、「本当に実直で、誰に対してもフランクで兄貴のような存在。日本の音楽界を大きく作り変えた」などと敬意を語っている。

桑田がカバーしてライブで取り上げた西城秀樹の作品には、2008年の『情熱の嵐』、2013年の『傷だらけのローラ』、2018年の『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』がある。

『情熱の嵐』『傷だらけのローラ』『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』など、西城秀樹のヒット曲が収録されたアルバム『GOLDEN☆BEST deluxe 西城秀樹』(2010年4月28日発売、Sony Music)のジャケット
『情熱の嵐』『傷だらけのローラ』『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』など、西城秀樹のヒット曲が収録されたアルバム『GOLDEN☆BEST deluxe 西城秀樹』(2010年4月28日発売、Sony Music)のジャケット

どちらもソロのライブとして行なわれたチャリティ・イベント『Act Against AIDS LIVE』における企画だったので、結果的には映像とともに音源が残されることになった。そして日本の歌謡曲を集大成したライフワーク『ひとり紅白歌合戦』のBOXに収録されて発売されている。

その他にも2018年の5月16日に急逝した西城秀樹を追悼した自分のラジオ番組『やさしい夜遊び』(同年5月19日放送)のなかで、ギターの弾き語りでカバーした『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』が絶品だったという声もある。

一方の西城秀樹は、自分が本当に好きで影響を受けた楽曲については、デビューして間もない時期から積極的にコンサートでカバーしている。

とくにロック色が強い洋楽のカバーに関しては楽曲を選ぶセンスもいいし、自分の中で昇華させてからの表現も突出していた。

1979年8月24日に後楽園球場において開催されたライブが収録されたアルバム『BIG GAME '79 HIDEKI』は、激しい雨の中での開催で有名になった2枚組のアルバムだが、伝説として語り継がれるキング・クリムゾンの『エピタフ』に加え、サザンオールスターズの『いとしのエリー』も歌っている。

『BIG GAME '79 HIDEKI』 (2022年6月24日発売、Sony Music)のジャケット写真。豪雨の後楽園球場で雷鳴が轟く中、「ヒデキに神が降りた」とも言われているコンサートだ
『BIG GAME '79 HIDEKI』 (2022年6月24日発売、Sony Music)のジャケット写真。豪雨の後楽園球場で雷鳴が轟く中、「ヒデキに神が降りた」とも言われているコンサートだ

オリジナル版『いとしのエリー』の発売日がその年の3月25日だったのだから、その直後にはカバーしようと決めていたのだろう。そういうセンスと決断の早さが、"ロックの申し子"らしいところなのである。

サザンオールスターズは、1978年にデビュー・シングルの『勝手にシンドバッド』がヒットしたことで一気に注目を集めた。当初は見た目の若々しい印象からして、都会に住む恵まれた家の学生たちだと思われて、一発屋的な見方をされたこともあった。

1978年6月25日にリリースされた、サザンオールスターズのデビューシングル『勝手にシンドバッド』(ビクターエンタテインメント)。曲名は沢田研二の『勝手にしやがれ』とピンクレディーの『渚のシンドバッド』を合成させたものだという
1978年6月25日にリリースされた、サザンオールスターズのデビューシングル『勝手にシンドバッド』(ビクターエンタテインメント)。曲名は沢田研二の『勝手にしやがれ』とピンクレディーの『渚のシンドバッド』を合成させたものだという
すべての画像を見る

しかし、3枚目のシングルとして発売した『いとしのエリー』で音楽的な評価を確かなものにして、そこからはライブの積み重ねによってバンドとしての成長を遂げていった。

1988年の『Keisuke Kuwata』から、バンドと並行して桑田佳祐はソロ活動を始めた。そこから実に多様な活躍を経ていくなかで、バンドも維持しながら今日に至っている。

ところで西城秀樹がカバーした『いとしのエリー』は、クセの強さを打ち出していた桑田佳祐の歌唱に比べると、切なさに満ちていて、素直に聴きやすくて深みも感じさせた。

最初から最後まで聴きどころなのだが、とくに2番のサビ前の「♫ エリー」のひとことと、最後にあえて声をつぶし気味にした「♫ エリー」からは、西城秀樹ならではのロック衝動が伝わってくる。

文/佐藤剛 編集/TAP the POP