総理官邸機能の弱さ、有能なブレーンの不在

イランもホルムズ海峡の緊張で石油の輸出入が滞り、資産も凍結され、経済的に強く締め付けられています。本音を言えば双方がこの不毛な対立を「やめたい」と思っている。

しかしメンツのせいで終われない。したがって今後は、激しい戦火は交えないまでも、ダラダラと続く「低い戦争(低強度紛争)」状態が相当長く続くと見るべきでしょう。

こうした厳しい国際情勢のなかで、日本の政府がポピュリズム的、あるいは場当たり的な政策に傾斜してしまう背景には、決定的な弱点があります。それは「総理官邸機能の弱さ」、もっと言えば有能な「ブレーンの不在」です。

日本の政治において、官邸が強力なリーダーシップを発揮するために極めて重要な役割を果たすのが、官房長官、そして「官房副長官」です。

官房副長官は、国会との調整、与党内の複雑な利害関係の集約、そして霞が関のコントロールなど、実務において極めて重い役割を担います。

小泉内閣の時、その重責を担っていたのは誰だったか。後に総理となる安倍晋三氏です。彼は官房副長官として歴代最長の記録を持ち、北朝鮮電撃訪問の際もこのポジションで辣腕を振るいました。

優れたナンバー2の不在

また、第2次安倍内閣の発足時を振り返れば、官房長官に菅義偉氏を据え、副長官には衆議院から加藤勝信氏、参議院から世耕弘成氏という今や「ビッグネーム」となった二人を配置しました。その後も萩生田光一氏や西村康稔氏など、実力者が名を連ねていました。

翻って、現在の高市政権の政務の官房副長官はどうでしょうか。過去に政治的トラブルで「出入り禁止」の憂き目に遭った佐藤啓氏や、当選回数も少なく経験の浅い、3期目の尾崎正直氏が就いています。

高市内閣で官房副長官を務める佐藤啓氏(左)と尾崎正直氏氏(右)
高市内閣で官房副長官を務める佐藤啓氏(左)と尾崎正直氏氏(右)

「当選回数が少ないから能力がない」と単純に批判するつもりはありませんが、政治というものは本質的に「貸し借り」の世界です。過去の選挙で誰を応援したか、困難な法案を通す時に誰が泥をかぶってくれたか。そうした属人的な人脈やネットワークの蓄積がなければ、複雑な利害を調整し、大胆な政策を断行することなど不可能です。

さらに、事務担当の官房副長官の役割も重要です。安倍内閣が霞が関を掌握できたのは、警察官僚出身でありながら早くから内閣府などで幅広い経験を積んだ故・杉田和博氏を据えたからです。現在の露木康浩氏も警察庁出身ですが、杉田氏のようなかつての杉田氏のような動きはできていないように思います。