「割安な日本」より「割高な海外」へ向かう日本企業の投資
日本企業は過去の海外投資から得られた収益を海外でそのまま再投資しているだけでなく、新たな海外投資もハイペースで続けています。2024年の「対外直接投資」は28.2兆円と、こちらも過去最高を記録しました。対外直接投資は「日本企業による海外への直接投資」30.7兆円と、「海外企業による日本への直接投資」2.5兆円をネットした数字です。ネットした28.2兆円も、片道ベースの30.7兆円も、共に過去最大を記録しました。
このうちすべてが円売りにつながるとは限りません。第一次所得収支のところで説明した再投資分も入っていますし、外貨を借り入れて投資している分もあるので、こうした部分は円売りにはつながりません。ただ、正式なデータはないものの、再投資分を除いた金額の半分程度は円売りを伴っていると考えられます。
これは案件ごとに事情がまったく異なるので、正確な数字を把握するのは不可能です。したがって、様々な機会に企業の方にこの点について伺っているのですが、概ね「対外直接投資の半分程度は円売りを伴う」というのは「当たらずとも遠からず」という反応をされます。この後、様々な形で日本からの流出している資金を紹介しますが、おそらく対外直接投資に絡む円売りが最も規模が大きいのではないかと考えられます。
そして、この点が日本経済の現状、今後の課題を考える上で重要なポイントになると思っています。日本の対外直接投資の行き先で圧倒的に多いのが米国なのですが、米国の平均年収は日本の倍以上です。オランダ、英国、オーストラリアの平均年収も日本よりずっと高いです。それではなぜ日本企業は労働コストが割安な日本ではなく、割高な海外への投資を増やし続けているのでしょうか。
日本国内の需要がそもそも弱いということもありますが、国内で生産をして輸出すればよい話です。やはり人手不足が問題なのでしょうか。国内で生産拠点を作りたくても、工場で働く人が確保できなければ意味がないので、海外に出ざるを得ません。おそらく様々な理由があって日本企業がわざわざコストの高い海外に進出しなければならなくなっているのだと思います。そのあたりの原因を根本的なところから改善することができれば、日本経済も強くなれるはずですし、円の価値が下落し続けることもないと思います。
文/佐々木融













