日本の財政再建が信用を維持できている理由
今後、日本が財政再建の信用を維持し続けるためにはどうすればよいのか。財政に関する専門用語を使うと非常に難解になるので、そうした言葉を一切使わずに説明を試みたい。
わかりやすく言うと、日本の財政再建を、企業の経営再建になぞらえるのがよいと思う。かつては、造船業界で世界屈指の競争力を誇ったある企業が、現在は国際競争力を失い、メインバンクの経営支援を受けているとする。この会社が再建されるためには、何が必要であろうか。
まず、株主や取引先、従業員など利害関係者からの信用を得るために、①数年間の経営再建計画を立てることが必須になる。企業活動では、常時、資金の貸し借りや、支払義務が生じており、そこで利害関係者はその会社が潰れないことを信用して、債権をすぐには回収せずに資金取引を継続する。従業員も同じで、働いて得た給与が遅配なしに振り込まれるなら安心して雇用契約を継続していられる。
その信用を担保するのが、経営改善計画である。日本経済の場合、基礎的財政収支(プライマリー・バランス、略してPBという人もいる)がそれに当たる。今後、数年間の財政収支の見通しを示し、いずれ債務元本の返済開始ができる計画になっている。
2023年1月に発表された「中長期の経済財政に関する試算」(内閣府)では、2025年度に黒字化する目標に対して、2026年度にそれが達成される見通しが描かれている(図表3-1-1)。この見通しは、毎年1月と7月の年2回改定されている。
日本の財政再建が信用を維持できている理由を三つの要素に分類すると、次の①~③によってだと理解できる。①経営再建計画が存在して、それがきちんと履行されていること。先述した通りそれが確認されると、多くの利害関係者は、その会社の経営の持続性が保たれていると安心する。それが信用力の担保になっている。