大統領の行動原理は「損か得か」「選挙に勝てるかどうか」

会談の席に着くトランプ大統領の頭の中にあるのは、世界の平和や民主主義といった崇高な理念ではない可能性が高い。大統領の行動原理は明確である。損か得か、そして11月の中間選挙に勝てるかどうかである。

トランプのイラン攻撃迷走に習近平の笑いが止まらない…怯える日本・台湾「歴史的大取引の恐怖が迫る」孤立主義を深める米国_4

日本・台湾を含む周辺国から恐れられているのは、歴史的な巨大な取引が行われることである。トランプ大統領は、農業州の有権者を歓喜させるために、中国に対してさらなる大豆の大量購入を迫るだろう。しかし、中国の指導部が無条件で米国の要求を呑むはずがない。当然、見返りを求めてくる。

中国が提示する条件とは何だろうか。米国が課している重い関税の全面的な引き下げかもしれない。あるいは、台湾の安全保障問題が取引される可能性もある。

台湾は東アジアの安定に欠かせない防波堤である。万が一、台湾の安全が脅かされれば、すぐ隣にある日本も深刻な危機に直面する。

しかし、不動産取引の経験に裏打ちされた大統領の目には、台湾も日本との同盟関係も、交渉を有利に進めるためのカードに過ぎないのかもしれない。大豆を買ってもらう代わりに、台湾への軍事的な支援を弱める。関税を下げる代わりに、東アジアにおける米国の軍事的な存在感を薄れさせる。

大国同士の密室の取引が進められていく恐怖

目先の経済的な利益と引き換えに、地域の安全保障の根本が売り渡されるようなことがあれば、世界の秩序は崩壊する。米国は、イランで手痛い迷走を繰り返しており、米国内からの批判に晒されている。

イラン情勢がどのような形で決着しても、トランプ大統領が今後積極的に世界情勢と関わるモチベーションはどう考えてもない。

日本や台湾がどれほど強い危機感を抱き警鐘を鳴らしたとしても、選挙の勝利だけを見つめる大統領の耳には届かない。同盟国の不安を置き去りにしたまま、大国同士の密室の取引が進められていく恐怖は、決して杞憂ではない。

大国の指導者が、国家百年の計ではなく、明日の選挙の得票数だけで動くとき、国際政治の舞台は、近視眼的な取引の場へと成り下がる。大豆の輸出量を増やし、一時的な歓声を得たとしても、引き換えに失うものはあまりにも大きい。世界の安定に対する責任を放棄し、同盟国の信頼を裏切るような取引は、長期的には米国の孤立を深め、衰退を早めるだけである。