F1は忖度なし、容赦なし、配慮なし
2026年に施行される新レギュレーションに合わせたパワーユニット開発は私がホンダにいた時代からスタートしていますが、私は退職の1年ぐらい前には手を引き、すでに角田哲史(かくだ・てつし)LPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)がメインになって行っていました。私は任せたら口出しは一切しません。
現在、ホンダのパワーユニットの開発責任者を務める角田LPLは私が選任しました。スマートで優秀で、技術センスもあります。ただパワーユニット開発全体を見るリーダーは、技術力だけでなく、判断力や先を読む能力、人を惹きつける能力なども求められます。
でも私と角田LPLでは役割が違います。私はどん底から立ち上げて頂点に立たせることが役割でした。角田LPLは這い上がる必要はありません。成功を維持していくことがミッションになりますが、それはそれで難しさがあると思います。
パワーユニットの新レギュレーションが導入される2026年に関しては、いちおう各メーカーすべてリセットされてのスタートになります。ホンダはどん底とはならないと思いますが、先行きが見えづらいところはあります。
2026年にガタガタになったら、また各方面からバッシングされるでしょう。F1は注目度が高いので批判は避けられません。そういうプレッシャーの中で戦うからこそ、人が育つのです。当然、それにビビっているようではリーダーは務まりません。
「F1は忖度なし、容赦なし、配慮なし」です。レースを面白くするために、BOP(バランス・オブ・パフォーマンス)と呼ばれるマシンの性能調整を行い、勝ったり負けたりの接戦を演出するということは一切ありません。
強いチームが勝ち続け、弱いチームが負け続けるのがF1という競技です。そういう究極のレースだからこそ技術者の競争やブレイクスルーが生まれるのです。
誤解していただきたくないのは、私はBOPを採用するレースを否定しているわけではないということです。ただ技術者が世界一を目指すのであれば、F1のようなレースである必要があります。
負けているチームにBOPと称してサポートがあるのであれば、そこに企業として技術者を投入しても、まったく育たないとはいいませんが、効率が悪いと思います。













