容赦や配慮がないからこそレースがヒートアップ

容赦や配慮のないレギュレーションですから、メルセデスが2014年から21年までコンストラクターズタイトルで8連覇を達成したり、2023年のレッドブルのように22戦中21勝を挙げたりすることもあるのです。

ファンにとっては勝ちが見えるレースというのはなかなか盛り上がらないものですが、F1だけは例外です。容赦や配慮がないからこそ、ドライバーやエンジニアもプライドを懸けて戦うのでレースがヒートアップします。

しかも面白いもので、F1の長い歴史の中にはマクラーレン・ホンダやメルセデスのように一時代を築くチームが登場することがありますが、彼らも未来永劫に勝ち続けることはできません。レギュレーションの変更が大きいと思いますが、数年おきに波があります。

ルマン24時間レースがシリーズ戦に組み込まれるFIA世界耐久選手権(WEC)や日本で人気が高いスーパーGTもBOPを導入していますが、それをずっと拒否し続けてきた唯一の最高峰レースがF1といっていいと思います。

2023年、パワーユニット開発に後れをとっているルノーがBOPではありませんが、パワーを向上させるための救済措置を適用してほしいと訴えました。しかし、ほかのパワーユニットメーカーの代表は拒否しました。ヨーロッパの技術者も私と共通の認識を持っていると感じます。

ただFIAは、BOPを導入することはしませんが、一番勝っているチームやパワーユニットメーカーが苦しむようなレギュレーション変更を時々してきます。

たとえば1980年代にホンダがターボエンジンでライバルを圧倒すると、自然吸気エンジンを導入することを決めました。でもそれは、あくまで各チーム共通のレギュレーションです。

強いところにハンデを背負わせて弱いところを有利にするというレギュレーションとは違います。BOPを導入すると、F1がF1ではなくなるというコンセンサス、共通の認識は関係者全員が持っているのでしょう。

本当の意味で、技術者対技術者の競争がある世界最高峰のレースといえば4輪ではF1ぐらいしかありません。そこで勝つためにはドライバーだけでなく、車体、パワーユニットの3つがすべてそろっていないとチャンピオンになることはできません。

F1は忖度なし、容赦なし、配慮なしという世界最高峰のレースだからこそ、そこでメルセデスやフェラーリに勝ってチャンピオンになれば自信が生まれ、世界一や世界初の商品開発にチャレンジするときに必ず役に立つと私は信じています。

ホンダはそういう無謀な挑戦をすることで成長していった会社です。F1での活動にはそんな一面もあるのですから、今後もチャレンジし続けてほしいと思います。

構成/川原田 剛

危機を乗り越える力 ホンダF1を世界一に導いた技術者のどん底からの挑戦
浅木 泰昭
危機を乗り越える力 ホンダF1を世界一に導いた技術者のどん底からの挑戦
2024年3月26日発売
1,760円(税込)
四六判/256ページ
ISBN: 978-4-7976-7445-3

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ホンダに30年ぶりのF1タイトルをもたらしたパワーユニット開発の陣頭指揮を執り、9年連続で軽自動車販売トップを独走するN-BOXの生みの親でもある元ホンダ技術者が、プロジェクト成功の真の舞台裏を明かす。

第2期F1時代の奮闘エピソード、ホンダ創業者・本田宗一郎さんとの思い出、初代オデッセイ、N-BOXの開発秘話、どん底からのF1プロジェクト立て直し、F1復帰に向けた「蜘蛛の糸作戦」の全貌、アストンマーティン・ホンダの勝算など。

芸能界随一のF1ファン、堂本光一氏との
スペシャル対談も収録!!

〇目次
第1章 ホンダ入社と第2期F1 世界トップの現場で得た教訓と自信
第2章 V6エンジン開発と初代オデッセイ 閉ざされた出世の道と技術者人生最大の危機
第3章 N-BOXがヒットし続ける理由 コストではなくコストパフォーマンスの勝負
第4章 定年半年前に再びF1へ ホンダの未来のために若手に何を残せるか
第5章 F1復帰への「蜘蛛の糸作戦」 リーダーに不可欠な成功のためのストーリーづくり
第6章 F1の未来とホンダの新たな挑戦 アストンマーティン・ホンダは勝てるのか
第7章 ホンダの存在価値と日本の危機 尖った才能を持った変わり者を組織の中でどう活かすか
スペシャル対談 堂本光一×浅木泰昭 なぜホンダはF1で再び世界一を獲れたのか?

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