子どものアイデアを絶対に馬鹿にしない

──『天才ビットくん』時代も含め、25年間続いた『ビットワールド』が、この3月で終了します。まずは、今の率直なお気持ちからお聞かせください。

いとうせいこう(以下同) いや、もう寂しいよね……。もちろんテレビの世界だから、「今年で終わるんじゃないか」みたいな話は毎年あるわけなんだけど、それでも25年間生き抜いてきたからね。昨年は舞台版もやったし、「まだ続くだろうな」と思っていたんだけど。寝耳に水だったね。

何よりこの番組は、テレビができる最先端のものすごい実験を平気でやってきたから、これが終わってしまえばもうテレビは実験をしなくなって、ますますネットとの差が開いてしまうな……というのが、テレビマンとしての感想だね。もったいないなと思ってる。

25年間『ビットワールド』のレギュラーを務めたいとうせいこう
25年間『ビットワールド』のレギュラーを務めたいとうせいこう
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──僕自身も子どもの頃『天才ビットくん』を観ていました。視聴者から寄せられたアイデアをもとに番組を作っていくというコンセプトがとても刺激的でした。

当時NHKで『デジタル・スタジアム』っていう、アーティストがデジタル技術を使って何ができるかを追求していた番組があって、その子ども版をやろうという話が僕のところに来たんだよ。

それで僕らは「子どもたちが内容もキャラクターも衣装もすべて決める」という仕組みを提案した。出演する僕らが着る服さえも子どもたちが描いて送ってきたものから選ぶ。そこは最初からはっきりと決まってたね。

──子どもたちのアイデアを番組に取り入れるときに、いちばん大事にしていたことは何ですか。

まず子どものアイデアを絶対に馬鹿にしないこと。そして褒めることだね。実際に送られてくるイラストは、とにかく訳の分からないものばかりなんだけど、それが最高におかしいんだよね(笑)。

升野(バカリズム)たちがやってるようなプロの大喜利じゃ絶対出てこない、普通の企画だったら間違いなく通らないものばかりでさ。「新潟県の形をした、でもギザギザであんまり新潟県じゃないやつ」に文字で「新潟県」って書いてあったりする。おかしいんだよ(笑)。あまりにぶっ飛びすぎてるアイデアを腕の立つ出演者が集まって受けて立つ。

子どもたちには本当に笑わせてもらったし、「君たちは天才だ」という気持ちは25年ずっと変わらずあったね。

子どものアイデアを面白そうに振り返るいとう
子どものアイデアを面白そうに振り返るいとう

──たとえば主要キャラクターが死んでしまったり、シリアスな展開があるのも『ビットワールド』の特色だと思います。

年度末に番組をどう盛り上げるかというと、キャラクターを消滅させるかどうか子供たちと話し合うんだよ(笑)。どちらのキャラクターを残すかを生放送の視聴者投票で決める。スタジオに何十人もの子どもたちがいて討論を展開しながら、中には悲しくて泣いてる奴がいたりとか……とにかく真剣なんだよね。テレビの向こうの視聴者からもいろんな意見が送られてきて、その熱さがこっちにも伝わってきてジーンとしちゃって……。

──月曜日から木曜日まで放送されていた『天才てれびくん』の明るい空気から、金曜日の『天才ビットくん』が始まった途端に急に訳のわからない映像が流れる。その落差に衝撃を受けた子どもも多かったと思います。

始まった途端、街が荒廃してたりとかね(笑)。子どもだけが感じる「破滅」や「死みたいなものをちゃんと映し出す。ただの明るい番組じゃないっていうところが子どもたちにとってリアルに感じる理由だったんじゃないかな。今はああいう超刺激的な番組が減ってるよね。