「愚かで、子どもじみていて、邪悪」
問題の動画は3月13日に投稿された。アメリカ政府は今回の対イラン軍事作戦を「Operation Epic Fury(「壮絶な怒り」作戦)」と名づけており、今回の投稿の冒頭にもそれが掲げられている。
Wii SportsのゴルフのホールインワンやボクシングのKO、野球のホームランなどのシーンの後に、標的に爆撃が成功する実写映像が組み合わされている。実写の映像の上には「ホールインワン」や「場外ホームラン」などの文字が重ねられ、醜悪で悪趣味な合成映像となっている。
これに対し、非難が殺到。英語で「愚かで、子どもじみていて、邪悪」「戦争はビデオゲームじゃない」「この映像自体が戦争犯罪」「公式アカウントとは信じられない」などの声が上がった。
日本人のユーザーも、任天堂の映像を勝手に使用したことへの怒りとともに、「不謹慎」「ホワイトハウスが本当におかしくなっちゃった」といった書き込みが殺到し、炎上状態となっている。
今回の投稿は、単独の“悪ノリ”として片づけにくい。ホワイトハウスはこのところ、イラン攻撃の映像に「Call of Duty」などのゲームや、映画、日本の人気アニメの動画を組み合わせた動画を相次いで投稿している。
これらは著作権を無視しているだけでなく、自らの攻撃を「どう派手に攻撃したか」を見せるために利用するという極めて許しがたい行為だ。その表象に自らの作品を使われたクリエーターも、一斉に拒絶反応を示したり、抗議をしたりする事態となっている。
批判の核心は、単なる趣味の悪さだけではない。国家の公式アカウントが、現実の死傷や破壊を“見ていて気持ちのいいコンテンツ”へと加工してしまうことの危うさにある。問われているのは、著作権の問題だけではなく、民主国家の政府が暴力をどう語るのかという規範そのものだ。
一方でホワイトハウス側は非難を意に介していない。問題視する報道各社に対し、ケリー報道官は「ホワイトハウスは、イランの弾道ミサイルや生産施設、核兵器保有の野望がリアルタイムで破壊されている多くの事例を、今後も示し続ける」と説明した。
つまり政権側は、批判の的になっている“ミーム化”そのものを問題とはみなしておらず、むしろ軍事的成功を強調する有効な広報手段だと位置づけていることになる。
今回の騒動が示しているのは、戦争そのもの以上に、戦争の見せ方が変質しているという事実だ。動画が短く、刺激的で、引用しやすく、ミーム化しやすいほど拡散力は高まる。しかし、その裏には、死者や負傷者、破壊された街、残された家族といった現実があるのだ。これをアメリカ政府は完全に無視し、打ち捨てている。
ホワイトハウス公式アカウントの今回の投稿が批判されるのも当然だろう。国家が「勝ち確演出」のコンテンツとして著作権を無視していることに加え、「命」を軽視しているよううな振る舞いをしているのだ。決して許されるものではない。
文/集英社オンライン編集部













