「けれど何かむしゃくしゃする」「人を見下し順列をつけ優位に立ちたい」。

日本を訪れる多くの中国人旅行者よりも、おそらく日本人の中間層の方がまだ所得は上だ。しかし中国のように経済が成長していれば未来に希望が持てるから、少ない収入でもそれを消費に充てる。冷静に考えればわかることだが、本当の富裕層はドラッグストアで爆買いなどはしないのだ。

ドン・キホーテ (写真/Shutterstock)
ドン・キホーテ (写真/Shutterstock)
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だがそれを見た日本の下位中間層は、なんとなく寂しさを感じる。むしゃくしゃする。

その寂しさやいらだちは、うらやましさの裏返しで、しかしそれを認めたくない人たちが、生活習慣の小さな違いなどをあげつらい、インバウンドはマナーがなってないと嘲笑する。あるいはフェイクニュースをすぐに信じてしまう。

クルド難民に対するいわれなき中傷も、生活保護世帯に対する偏執的な追及も、根は同じところにあるのだと思う。

この日本特有のこのような現象を仮に「微温的格差」あるいは「日本型の微温的格差」と
でも名づけておこうか。

さて、このような顕在化しにくい怨嗟の念に対して、はたしていったいどのような対応策を見出せるだろうか? 何しろ対象は、本人たちも認めていない、認めたがらない寂しさなのだ。「寂しいんだね」と声をかけたところで、「寂しくないよ、放っておいてくれ」と言われるのが関の山だ。

どうすればいいのだろう。

どうしようもないのだろうか。

文/平田オリザ

寂しさへの処方箋 芸術は社会的孤立を救うか
平田 オリザ
寂しさへの処方箋 芸術は社会的孤立を救うか
2026年2月16日発売
1,056円(税込)
新書判/256ページ
ISBN: 978-4-08-721401-7
今、日本は他国とは違う独特の「寂しさ」「いらつき」「不安」に覆われている。終わりの見えない不況、アジア唯一の先進国からの転落と国力の衰退、そして戦前と同じく、産業構造の変革にともなう「精神(マインド)の構造改革」に再び失敗していること…などがその背景にある。
著者は2001年刊行の『芸術立国論』で「日本再生のカギは芸術文化立国をめざすところにある!」と提案した。
本書はその試みを現代に合わせてさらに進化させ、モノが飽和しコトの消費が求められる時代に芸術と観光が果たせる役割、社会的孤立を救うための文化による社会包摂の動き、教育や地方が実現可能な少子化対策など、日本の衰退をくい止める新しい処方箋を再提案する。
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