泣き寝入りだけはしないように

受験生にとって最も切実なのは、「被害に遭ったら終わり」にならないことだ。大学入試センターは、痴漢被害で試験場に向かう途中に影響が出た場合、追試の対象になり得るとして、受験票記載の大学への報告を呼びかけている。

文科省も同趣旨で、試験時間の繰り下げや別日程への振替など、受験機会確保の柔軟対応を求めている。この「救済がある」周知は、被害者に“声を上げる選択肢”を戻す。加害者が最も利用するのは、受験生の沈黙だからだ。

政府は2023年に「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」をまとめ、痴漢を重大犯罪と位置づけたうえで、重点的取締り、防犯アプリ普及、鉄道事業者の取り組み共有、車内防犯カメラ、学校での安全教育などを列挙している。

また、「被害者は一切悪くない」「被害者を一人にしてはいけない」と明記し、二次被害を生まない姿勢も打ち出している。

さらに1月14日には警察庁が公式Xで「受験生の皆さんが安心して会場に向かい、これまで頑張ってきた成果を十分に発揮できるよう、受験期の警戒・取締りを強化するなどしています。痴漢被害に遭われた方や痴漢を目撃した方は迷わず110番通報をしてください」と投稿した。

警察庁が呼びかける痴漢行為への啓蒙活動(警察庁公式YouTubeより)
警察庁が呼びかける痴漢行為への啓蒙活動(警察庁公式YouTubeより)

行政が対策を強化している一方で、受験生当事者ができる対策として、次の3つが挙げられる。

・時間に余裕のある行動計画(一本遅い電車でも間に合う設計/集合場所の共有)
・受験票の連絡先(問合せ大学)をスマホに登録し、いざという時すぐ連絡できるようにする“救済ルート”の準備。
・警視庁の「デジポリス」には、痴漢撃退表示や防犯ブザーなど、声を出しづらい状況で助けを求める機能がある防犯ツールの活用:

さらに、痴漢は“現場の空気”に依存する。加害者を取り押さえることだけが支援ではなく、「大丈夫ですか?」など、被害者側に立つ声かけが抑止になる。

目撃時は、危険を冒して単独で対峙するより、駅員・乗務員への通報、被害者への声かけ、周囲に助けを求めるなど、複数で安全に介入することが重要だ。