「まさか自分がこういった被害に遭うとは思わず、声が出ませんでした」
痴漢撲滅に向け、東京都が庁内横断のプロジェクトチームによる「痴漢撲滅プロジェクト」を進めている。その一環として昨年12月に公表した実態調査によると、電車内・駅構内での痴漢被害に遭った人の割合は37.2%(女性54.3%、男性15.1%)で、男性でも一定数が被害に遭っている現状が明らかになった。
都内に住む30代の男性は、夜の満員電車の中で痴漢被害に遭った経験があるという。
「つり革につかまって立っていたところ、酔っぱらった男性が乗車してきました。右手には手提げカバンを持ち、人混みをかき分けて隣の車両へ移動すると思ったものの、僕の後ろで立ち止まったんです。距離が近いと思った直後、僕の体に手が当たりました。最初は『間違って触れてきただけ』だと思ったものの、その後も触られ、痴漢だと気づきました。
満員電車だったので、周りからは特段何も言われません。まさか自分がこういった被害に遭うとは思わず、声が出ませんでした。次の駅で途中下車し、駅員に事情を話すものの、現行犯でない限り逮捕は難しいと言われました」
知られざる男性の痴漢被害。その実態について、臨床心理士の西岡真由美氏に話を聞いた。
「都や内閣府の調査によれば、痴漢被害を受けた際に『何もできなかった』『我慢した』という男性は女性よりも多い結果となっています。
さらに、『逃げた』『移動した』と回答した割合が、男性よりも女性のほうが多くなっています。被害を受けた際に、男性は女性以上に『逃げた』『移動した』という行動を取りにくいということがデータでもはっきり出ています」
その背景として、加害者の性別も関係している可能性があるという。
「内閣府の調査では加害者の性別を聞いています。女性が被害者の場合、加害者は『異性』が89%、『同性』が1%(「よくわからない」10.1%)です。これに対して男性被害者の場合は『異性』の加害者が42.5%、『同性』が44.1%(「よくわからない」13.4%)とほぼ半々です。つまり男性が被害に遭う場合は、女性が加害者のケースも少なくありません。
社会には『男性=加害者』『女性=被害者』といった固定観念があります。それゆえ、男性自身が被害に遭った場合にすぐには状況を把握できず固まってしまう、という傾向があるのかもしれません」













