歴史の地層から吹き出てくるもの
藤原 事実もそうですが、この人の生きた100年とは何だったのかというテーマを追うこの本では、歴史研究をしている人間としては、すごく歴史観も鍛えられました。本を読んであらためて感じるのは、やっぱり歴史とは地層だなということです。決して物語ではなくて、突然、地表に吹き出てくるものだなあと思う。
大地が突然ぱちっと割れて、ボーンと吹き出てきたのが硫黄島の話だし、それに対して青木さんは、きっとこうだったかもしれない、いやそうは言い切れないという推量をまじえつつ、行きつ戻りつ検証している。その突っ込み方が、僕は、すごいいいなと思って。それがあるから、読んでいて面白いんですよ。
(撮影/三好祐司)
青木さんは、この本の中で、なぜ文雄さんが命を絶ったのかについてはアンサーとして書いていませんね。最後までクエスチョンなのは、読者に投げかけているのでしょうが、そう簡単に答えられる問いではないということがメッセージにもなっている。だから私もなぞ解きに参加して、同じようにあれこれ推量していく。それがこの本を読む醍醐味でもあると思いました。
青木 文雄さんが自ら命を絶ち、もはや直接話を訊くことが叶わない以上、本当の意味での真相は確かめようがありません。ただ、「国策の過ち」に殺されたことだけは間違いない。そして、本当にそれだけが要因だったのか、102歳の自死から僕たちが何を読み取るべきか、それを一人でも多くの読者と一緒に考えるきっかけにしたい。それこそが10年近い歳月をかけて事実と向きあい、文雄さんとその家族に誘われてきた著者としての想いであり、願いです。藤原さんにも深く読みこんでいただき、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
構成/宮内千和子 撮影/三好祐司
2026年1月26日
2,200円(税込)
四六判/224ページ
ISBN: 978-4-08-789024-2
102歳の古老は、なぜ自ら命を絶ったのか?
東日本大震災、福島第一原子力発電所事故から15年
『安倍三代』の青木 理が満を持して放つ、3・11レクイエム
◆内容紹介◆
2011年4月11日深夜、東北の小さな村で、百年余を生きたひとりの男が自ら命を絶った――。
厳しくもゆたかな自然に囲まれ、人と土地が寄り添ってきた村で、何が彼をそこまで追い詰めたのか。
その死の背景を追ううちに見えてきたのは「国策」という名の巨大な影と、時代に翻弄される人々の姿、そして戦争の記憶だった。
『安倍三代』の青木 理が静かな筆致で、現代日本の痛みと喪失をえぐり出し、美しい村の記憶と、そこに生きる人々の尊厳を描く渾身のルポルタージュ。
◆推薦◆
「この本は、ひとつの村の物語であり、同時にこの国の百年の記録である。」内田樹氏
「”この風景は私”と言えるほど土と人が結びついた暮らしを、原発事故によって断ち切られた人々の喪失が、本書には刻まれている。」藤原辰史氏
「貨幣による豊かさの名のもとに、共同体と暮らしがいかに壊されてきたか。その現実を、本書は静かに突きつけている。」田中優子氏
2025/10/2
2,970円(税込)
288ページ
ISBN: 978-4910904030
大気・海洋・土壌汚染、アレルギーの増加、免疫の不調、日常化する暴力、子どもの商品化、奪われる睡眠時間……。この世界の現実をどう捉えるか。
「人間」と「環境」を根源から定義しなおし、ありえたかもしれないもうひとつの世界を描きだす。
世界の高速回転化と自己攻撃化にあらがう、驚くべき思考の集成。
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