若い人の地方移住には経済的インセンティブが必須

内田 首都圏に集まった資源をどう地方に分散させるか。それを実現させるには、地方に暮らしていたほうが、都市部にいるより自己利益が安定的に確保できるという生活の選択肢を用意しないといけない。

でも、これは政治にしかできません。地方移住の勧めは営利事業にはならない。でも、若い人を地方に向かわせるためには何らかのインセンティブが要る。今、僕の周りにも地方移住する若い人たちが何人もいますが、都市における競争とか査定とか新自由主義的なイデオロギーや冷淡で不人情な社会にうんざりして、都市を離れた。

そこで手づくりの小さな共同体をつくって、穏やかに暮らすという選択肢を選んでいる。たしかに、その選択は正しいのですけれども、地方移住には経済的なインセンティブがなかなかない。どうしても、地方に移住したほうが都市で暮らすよりも経済的なメリットがあるという仕掛けを作らないといけない。

青木 僕も3・11の被災地を長年取材し、あるいは能登半島地震の被災地にも幾度か足を運びましたが、最初は被災地支援のボランティアとして現地入りしたけれど、このままここで暮らすことにしました、という若者に幾人も出会いました。

地元役場などで職を得た人もいましたし、地元で高齢者が営んでいた果樹園を引き継いだり、農業に従事しはじめた若い子もいた。内田さんがおっしゃるとおり、なかには都市部の生活や新自由主義的な労働環境に嫌気がさして「自分探し」をしているような若者にも多く出会いましたが、そこにきちんとインセンティブを与えていくと状況は変わってくる可能性が十分にあるし、それをできるのはたしかに政治しかありませんからね。

内田 自治体の中には、就農者を増やすために、3年間就農してくれたら、その間は毎月給料を払うというかたちで農業の後継者を育成するという仕組みを作っているところがあります。それを利用する若者もいます。でも、その3年が過ぎて、自立すると、農業の継続は難しい。食べ物を作っているわけですから、食うには困らない。

でも、子供ができると農業だけでは現金収入があまりに少ない。医療と教育にお金がかかるので農業を放棄して、またサラリーマンに戻ってしまう。まだまだ経済的なインセンティブが足りないと思います。国がはっきりと方向を決めて、地方に行って就農すれば、期限を切らずに、継続的に経済的支援をするという政策を採るしかない。今、食料自給率が38パーセントと言っていますが、鈴木宣弘先生(経済学者)によると10パーセント切っているという。本当に危機的な状況なんです。

青木 農産物を育てるための肥料や種子も大半を輸入に依存しているから、それも併せて考えると自給率はさらに大きく下がってしまう、と鈴木さんは指摘されていますね。