「令和の日本列島改造」とまで呼んだ政策が看板倒れに
石破政権の看板政策といえば、「地方創生2.0」だ。
そこには、地方の活性化を通じて人口減少を食い止め、東京への一極集中化を解消する狙いがあった。地方創生という構想そのものは2014年に第2次安倍晋三改造内閣が掲げたもので、当時の石破首相は初代の地方創生担当大臣に就任した。いわば、地方創生のスペシャリストであり、彼のライフワークでもあった。
石破首相の「地方創生2.0」をまとめると、5つの柱で構成されていた。
・若者や女性が安心して暮らせる生活環境の創生
・地方経済を活性化させるイノベーションの創生
・産官学の地方移転と創生
・DXを用いた新時代のインフラ整備
・都道府県、市町村に限定されない地域経済の成長
豊富な知識が強みの石破首相らしい全方位型の内容だが、地方創生に明るくない国民にはひどく分かりづらい。2012年に誕生した安倍政権が掲げた経済政策の3本の矢「大胆な金融政策」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」とは対照的だ。
石破首相は問題点を多面的にとらえ、課題の一つひとつを真摯に解消しようとするところに強みがあるように見えた。辞任の意向を示した9月7日の会見では、「日本の政治が安易なポピュリズムに堕することになってしまうのではないかと、その危惧を私は強めております」と発言しているが、外国人や財務省などとの対立を煽る“分かりやすさ”で人気を獲得する政治家とは対照的な存在だ。
「地方創生2.0」は石破イズムが凝縮されており、それが裏目に出てしまった印象がある。石破首相は2025年1月24日の方針演説で、「楽しい日本」を実現する核心は地方創生であり、これを「令和の日本列島改造」とまで呼んだ。
「日本列島改造論」は石破首相が師と仰ぐ田中角栄元首相が唱えたもので、全国のインフラを整備して人の流れを生み出したことで国土発展の起点となったものだ。
だが、石破首相の力強い言葉とは裏腹に、「地方創生2.0」の印象は薄い。そして地域創生という構想そのものが、このまま潰えてしまうように見える。