地域経済を崩壊させる人口の一極集中
内田 僕が今危機感を感じているのは食料と医療と教育です。エネルギーの自給は諦めるしかないので、とりあえず自前で何とかなりそうなことから考える。まずは食料の自給率を高めることです。そのためには、農家にとにかくけちらずにお金を出す。
それから都市部で劣悪な雇用条件で働いている人たち、いい仕事がなくて困っている人たちに、地方に移住して、地方で就労しようと呼びかけること。今人口減が問題だと言いますけれど、僕は違うと思う。問題は人口減より人口の一極集中なんです。
青木 僕が記者として駐在した韓国も深刻です。近年はすさまじい勢いで少子高齢化が進み、しかも5000万人余りの人口のうち、ソウル首都圏に3000万人ぐらいが集中してしまっている。
内田 韓国は人口一極集中の適例ですね。0.78という異常な出生率で、人口が急減している。釜山に行って驚くのは、街が中高年ばかりで、若者の姿をみかけないということなんです。子どもの声も聞こえない。最近釜山周辺で大学が4つ潰れたそうです。若い人たちはみんなソウルに行く。地域経済も崩壊寸前だそうです。
韓国に毎年行って講演しているんですが、よく頼まれる演題が「人口減にどう立ち向かうか」です。その演題での講演を地方からよく頼まれる。会場に来るのは、その土地の老人たちばかりです。そういう時には「皆さん絶対にここで生業を営むことをやめてはいけません」と言っています。
いつか若者がきっと戻ってきます。そういう政策を誰か政治家が考えてくれますから、それまではここに踏みとどまって、いくら行政サービスが低下しても、故郷を捨ててはいけません。そういう話をします。聴いている老人たちは僕のことなんか知らないんです。
僕の本を読んだこともない人が、僕の話を聴きに来るのは韓国の知識人言論人の中に若者に向かって「地方に帰れ」と言う人がいないからなんだと思います。人口の一極集中で過疎地と過密地を創り出すのは資本主義にとって自明のあり方ですから、韓国社会は資本主義の要請に忠実に従っている。僕は言うのは「資本主義に従うな」ということですから、そんなことを公言する人は韓国にはいない。それだと「マルクス主義者だ」ということになって、国家保安法に抵触しますからね。
青木 資本主義こそが人口の一極集中を加速させ、地方を崩壊させていると。
内田 そうなんです。問題は人口減じゃない。人口の一極集中なんです。江戸時代の日本列島の人口は3000万、明治時代だって5000万人ですよ。5000万人でも全国津々浦々で人々は生業を営んで、固有の文化を持ち、固有の祭祀、儀礼、芸能があり、地域の特産物を持っていた。そういう生活単位が日本中にあった。
今の人口は1億2300万人です。これだけいて「もう地方には生きる道がない」ということはありえない。地方には生きる道がないというのは、資本主義経済の要請に従えば必然的にそうなるというだけのことです。作為的に過密地と過疎地を創り出し、過密地で経済活動を行い、過疎地は無住地化して、生産性の高い産業を営む、これは資本主義の要請です。無住地に原発を作り、ソーラーパネルを並べて、風力発電の風車を立て、産業廃棄物を廃棄する。
もう地域住民がいないんですから、「地域住民の反対」ということが起きない。誰も住んでいないし、これから誰も住む予定がない土地なので、生態系をどれだけ破壊しても、誰も困らない。山が崩れようが海が汚れようがもう関係ない。日本の山河を汚すだけ汚すことでなんとか経済成長を図る。資本主義の要請に従えば、そうなります。
青木 そうやって人が生きるために必須の「境界線」をどんどんと破壊しつくしている。本来これを修正すべきは政治の役割ですが、「地方創生」などと口では言っても、農村部の過疎化と高齢化には一向に歯止めがかからない。















