「この時期の富士山は、人が浮いてしまうほどの風が吹いている」
民間の捜索・救助チーム「山岳遭難捜索ネットワーク」も同様に、「入山禁止」の法的効力の弱さを感じていた。
「いわゆる富士山に関しては、一応『登山禁止』とは書かれてはいますが、法的に入山を禁止する権限はないのが現状です。林道は通行止めであっても、そこに強制的に入った瞬間に逮捕されるような法律や条例は存在しませんから」
実際、同ネットワークの担当者が過去に警察関係者と話をした際も、「林道そのものではなく、積もっている雪の上を歩くなら法的にどうなのか」という議論になるほど、線引きはあいまいだという。
今回の現場となった富士宮口8合目付近は、冬季は極めて過酷な環境だという。
「富士宮側の登山道は傾斜がかなり急峻(きゅうしゅん)で、風をまともに受ける場所です。基本的にこの時期の富士山は、人が浮いてしまうほどの突風が吹いており、天候次第ではどんなに登山経験が豊富であっても滑落してしまうケースが多いです」(同前)
また、男性が登山道へ入った経緯について、担当者は「“誤って入ってしまった”と考えるのは難しい」と指摘する。
「主要な登山口はベニヤ板などで頑丈に封鎖されており、そこを突破するのはかなり大変です。簡単には入山できないようになっているはずなので、無視して突破しようという意思がないと入山できないでしょう」(同前)
背景には外国人観光客による富士山への関心の高さもあるという。
「近年、海外の方々から見ても、日本の象徴として『登ってみたい』という外国人は非常に多いです。歩いて登り下りする人もいれば、下山時は滑り降りたいという人もいて、楽しみ方はさまざまです。エベレストのような記録に残るほどの標高や難しさはないものの、登山未経験者にとっては十分に難しい山と言えます。さらに富士登山で厄介なのは、途中までは意外に簡単に登れてしまう点です。
5合目までは比較的容易に行けてしまうが、そこから先で環境が急変する。登りは体力でカバーできても、下りになると地面が凍結しているので、とても危険なんです」(同前)













