自分が誰かの背中を押したい

インタビュー中、ここまで赤裸々に語る必要はあるのだろうかと何度も思った。しかし、成田は、本書の「はじめに」でこう書き綴っている。

「人生とは『人』が『生きる』と書くけれど、僕の場合は『人』に『生かされる』が正解だ」

成田は立ち止まりそうになるたびに、ギターに、音楽に、ファンに、兄に、母に、そしてメンバーに背中を押された。

成田は、きっと今度は、自分が誰かの背中を押したいと願っている。

どこかで今が人生のどん底だと嘆く誰か。どこかで夢を諦めてしまった誰か。そんな誰かの背中を押すために、全てをさらけ出したのではないだろうか。

「この瞬間まで、人生の選択をすべて間違えてきたようにも思う」と語る成田が、この自叙伝を介して、「大丈夫だよ」と語りかけているように思えてならない。

そして、悪いことばかりに思える人生も、諦めず挑戦を続けることで、「人生は良いことも、悪いことも、同じ数ずつ起こる。とんとんなんだよ」と証明するために。

何度目かのインタビュー後、成田が働いていたとんかつ屋で昼食をご馳走になった。その店のとんかつは本当に美味しかった。そう感想を伝えると、成田は嬉しそうに微笑み、とんかつを揚げるコツを、美味しい豚汁を作るにはタイミングが大切なことを熱心に教えてくれた。

最後に、かつて一度でも成田昭次に声援を送ったことがある人たちが、今もファンであり続ける人たちが、この自叙伝を読み終えた時、成田昭次というアーティストが、愛されるべき人物であり、声援を送るに値する人物だということを再確認していただけたら幸いです。

文/水野光博 写真/井村邦章