僕の人生は僕だけが
現在、もりひさんは『世界一明るいがん患者』を名乗り、進行する病状をポップ&ポジティブに発信している。YouTubeのチャンネル登録者は、開設からわずか半年で9万人を超えた。ライブ配信を観ていることを伝えると彼は明るい声色でこう話した。
「配信、観てくれてるんですか? すごくうれしいです! 予想以上のフォロワー数に本当にびっくりしていて。今まで耐え続けてきたことが、ようやく少しずつ報われているのかなと思えて。
配信を始める前の自分はただの『顔に穴の空いた病人』でしたが、今はちょっと自分を褒めてあげることができるようになったかもしれないです」
もりひさんのもとに届く声は応援が圧倒的だが、心ない言葉を投げかけられることも少なくないと笑う。
「まあ、そういうアンチコメントよりも、僕はがんのほうが憎いので。だからアンチしてくる人を相手にもしてないですね」
配信を観ていると、もりひさんの頬の穴を覆うガーゼは日を追うごとに大きくなっている。現在の穴の大きさについて聞くと、
「ペットボトルの底の大きさぐらいです。『いずれ顔なくなるんちゃう、これ?』っていうのはありますよ(笑)。もうね、ひとつの物語だと思って、みなさんにも見てほしいです。本当に」
この返答だけでも、もりひさんの人柄とサービス精神、そして気遣い屋であることが伝わるのではないだろうか。とはいえ、いつでも上機嫌でいられるわけではない。気持ちが落ちるときも、もちろんある。なぜ、自分だけがこんな思いをしなくてはいけないのか? そう思ったことも少なくないのではないだろうか。
「もう、今まで何年もそう思い続けてきました。その結果、『これ、思ってても意味ないな』っていうことに気づいて。自分の中で大切にしていて、視聴者さんにも言っている言葉があるんです。
『下を向いてもいいけど、後ろは向かないでおきましょう』
過去を振り返ってしまうと、どうしても嫌なことしかない。前を向く過程で落ち込むことがあったときに、下を向くのはいいけど、後ろは振り返らんでおこうと。そのスタンスは大事にしています」
心が折れてしまうような過酷で壮絶な22年。その人生を、もりひさんはどう捉えているのだろう?
「悪くない人生やとは思いますけどね。本当にてんやわんやして、暇がない人生。もちろん、嫌なことばっかりですけどね。考えれば考えるほど嫌なことだらけですけど。
でも、今を見つめ直したときに、自分はやっぱり強く生きれているなと思うときもある。あんまり調子に乗ったことは言いたくないんですけど、たぶん、僕の人生、他の人は絶対できないと思うんですよね。
僕の人生は僕だけが送っているものなので。だから案外、自信を持って生きています(笑)」
『世界一明るいがん患者』は、『世界一強いがん患者』でもあった――。
取材・文/池谷百合子














