二刀流で活躍する

大橋 そういえば、宇山さんが脚本を書かれたドラマ『スイッチガール!!』、僕、観てたんですよ。

宇山 そうなんですか!? かなり以前の作品なのに……嬉しいです! 二〇一一年の放送なので、もう十数年前ですね。しかもCS放送でした。僕の脚本家デビュー作です。

大橋 たしか脚本家としてデビューされてから小説を書くようになったんですよね。小説と脚本ってやっぱり違うんですか?

宇山 『スイッチガール!!』はマンガが原作ですが、オリジナル脚本も何作か書いてきました。『今夜、ロマンス劇場で』や月9でやっていた『君が心をくれたから』などがそうですね。脚本は、監督とプロデューサーと打ち合わせをして物語の精度を高めていくので、いわば団体戦。小説は一人ですべてを考えるので個人戦といった印象です。その点が大きな違いですね。
 もう一つの違いは、すべてを言葉にするかどうか、です。脚本と小説、どちらもイメージを思い浮かべながら書きますが、小説はそのイメージをすべて言葉にして紙の上に書いていきます。登場人物の表情や服装、その日の天気や風の雰囲気、光の加減なんかもすべて。ドラマは監督を始めとするスタッフの皆さん、俳優の方々に表現してもらうことで完成するのに対して、小説は自分一人で完成させなくてはいけないので、言葉を尽くして読者に自分のイメージを伝える。それが最も大きな違いかもしれませんね。
 ただ一方で、僕は小説を書く時でも、映像作品のように書くことを意識しています。セリフが冗長にならないように気をつけるとか、シーンが長くなりすぎないように場面転換をこまめに入れてテンポを保つとか。そういう意味では脚本の経験が役に立っていると思います。

大橋 なるほど……。脚本と小説で通じるところも違うところもあるんですね。

宇山 それこそ大橋さんも、アイドルと俳優の二刀流で活躍されていますよね。スイッチの切り替えってあるんでしょうか?

大橋 僕もそこ、聞かれることが多いです(笑)。でも自分はあくまでアイドルの枠の中の一俳優、一モデルで、一バラエティタレントという考え方なので、スイッチの切り替えというのはあんまりないかもしれませんね。自分の中でやっぱり一番はアイドル、自然に「アイドルの大橋和也」なんです。でも、メンバーに聞いてみたら、アイドルと俳優のスイッチは違うって言っている子もいました。お互い自分の中の正解があるので、僕自身は逆にそういう切り替えのスイッチがあるのがすごいなとも思いますし、違いが面白いなと感じます。
 さっきの脚本と小説の二刀流の話に戻りますけど、いずれにしてもオリジナルのストーリーを一から考えるのってすごく大変なことだと思うのですが、どうやって『桜のような僕の恋人』のお話は考えられたんですか。

宇山 二十歳ぐらいの時かな、大学のキャンパスを歩いている時に、物語の肝となるシーンを思いついたんです。その時は学生だったので執筆はしませんでしたが、その場面だけは頭の中にずっとあって……。小説家としてデビューしたあと、その場面に至る物語を書きたいと思って、担当編集者さんに相談したのがきっかけでした。

大橋 『桜のような~』は最初の出だしも面白くて、僕、すごく好きなんですよ。主人公の男の子が美容院に髪を切りに行って、気になっていた美容師の女の子に耳たぶを切られちゃう。すごい出会いですよね(笑)。

宇山 少女マンガみたいなスタートにしようと思ったんです。ラブコメっぽい感じといいますか。物語は中盤から後半にかけてシリアス展開になるので、前半はとにかくコミカルに、キュンとするエピソードがたくさんあったほうがいいかなと。若い人が読みやすいように、物語に入っていきやすい入口を用意したかったんです。

大橋 そういえば、宇山さんの小説の主人公はみんな若いですよね。

宇山 そうですね。高校生から二十代後半がほとんどですね。人生において、そのくらいの年齢って岐路に立つことが多いと思うんです。進学や就職、恋愛や結婚だけじゃなくて、自分はこれからどうやって生きるべきかを悩んだり。でも人間的にはまだまだ未熟で、大人へと成長していく途中にいる。そういう発展途上の人たちの葛藤を描きたくて若者を主人公にしています。それと、そのくらいの年齢の読者の方々に、ひとつでも響くものがあればいいなと思って。

宇山佳佑さん
宇山佳佑さん

「愛らしさ」をまとって演じる

宇山 大橋さんは小説を読んでいて、この役をやってみたいと思うことはありますか。

大橋 しつこくタイトルを出しちゃいますが、『桜のような僕の恋人』です(笑)。ほんまにやりたかったんですよ。

宇山 そうなんですか! 晴人君を?

大橋 そうです。僕が読んだ時は主人公のほうが年上だったと思うんですけど、「この人、かわいいなー」と思ったんです。自分に当てはまるところもあるなと。二回読ませてもらって、一回目は第三者目線で、二回目は主人公の男の子に感情移入して読みました。感情を揺さぶられて、だんだんと自分で演じてみたいと思うようになって……。周りにも言っていたので、ネットフリックスで映像化されると聞いた時には、ちょっと悔しかったですね(笑)。

宇山 二度も読んでくださっただなんて……本当にありがたいです。ネットフリックスで映像化した『桜のような僕の恋人』は、大橋さんと同じ事務所の先輩の中島健人さんが晴人君を演じてくださいましたね。

大橋 「くそー、健人君かー!」って思いました(笑)。ほんまに言ってたんですよ。〝晴人役をやりたい〟って事務所の人にも。

宇山 すごく光栄です。ぜひいつか映像の世界でもご一緒したいですね!

大橋 宇山さんの小説で、僕に合いそうなキャラクターっていますか?

宇山 新刊の『風読みの彼女』の主人公・野々村帆高が合っているんじゃないかな。年齢的には今の大橋さんより少し下で、二十二歳という設定ですが、勝手ながら雰囲気がぴったりだなと。帆高君は物語冒頭、ある理由から引きこもっていて、ちょっとヘタレなところからスタートするんですよ。そんな彼がヒロインと出会って、様々な依頼を通じて成長してゆく……というお話なんですけど、憎めないヘタレを演じるのって、すごく難しいと思うんです。ある種のかわいさがないとできない。

 以前、大橋さん主演の『君がトクベツ』の映画を拝見したんですが、もともと持っていらっしゃる愛らしさというか、人懐っこさみたいなものがにじみ出ていました。すごくナチュラルで素敵に演じていらっしゃったので、大橋さんなら帆高君のこともチャーミングに演じてくださるような気がしています。

大橋 観てくださったんですか、ありがとうございます! 『君がトクベツ』で、僕は国民的アイドルグループ「LiKE LEGEND」(ライクレ)のリーダー・桐ヶ谷皇太を演じさせていただいたんですが、皇太はモロにアイドルで、モロに僕そのまんまやったんですよ(笑)。アイドルだということもそうですし、グループのリーダーという立ち位置もなにわ男子での僕と一緒。原作者の幸田もも子先生にも伺ったんですが、そもそも僕をイメージして描いてくださった部分もあるらしくて……! 自分に近い役なので、演じやすいといえば演じやすいんですけど、僕ではなく桐ヶ谷皇太として見てもらうにはどうしたらいいか、というところが難しかったです。

宇山 愛嬌があって、かわいらしくて自然でしたよ! 大橋さんは役を自分に引き寄せるタイプなんでしょうね。そうかと思うと、泣き崩れるシーンは真に迫っていて感動しました。演技の幅が広くて、すごいなと思いましたね。

大橋 その映画の後には、ドラマ『リベンジ・スパイ』という作品をやらせていただいたんですけど、復讐のために企業に潜入するという自分とは全く違うタイプの役で……。これはこれで演じていて楽しいなと思いましたね。

宇山 いろんな役をやってらっしゃる大橋さんを見てみたいです。意表を突いて悪役とかどうですか? たとえば殺人犯役とか、意外とはまったりしますかね(笑)?

大橋 実はめっちゃやってみたいです(笑)。犯人役は以前一回やらせていただいたんですけど、同情できるような犯人役だったので、いつかもっとサイコパスで非現実的な役、現実世界では絶対できないような役にチャレンジしてみたいなという気持ちはありますね。あと僕も宇山さんが書いたドロドロした作品も読んでみたいので、もし書かれた時はぜひ教えてください!