「つかみ」でお客さんの緊張をほぐす

若手の子たちから「賞レースでつかみを入れるかどうか迷っています」と相談されることがあります。賞レースはネタの制限時間がシビアなので、つかみに時間をかけずにすぐメインのネタに入ったほうがいいんやないかと考えているんでしょう。

僕自身の考えをいえば、賞レースでも寄席でもつかみは入れたほうがいいと思っています。

漫才はいかに早くお客さんとの間に「聞いてもらえる雰囲気」を作れるかが勝負です。ネタに入ったら基本的には「2人の会話」になるので、お客さんを引きつけるチャンスはやっぱり最初です。

だから、舞台に出てきた開口一番につかみを入れる。要はアイスブレーク的なやりとりを入れて緊張を解いたほうが、その後、漫才がやりやすいんです。

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「緊張を解く」というのは、漫才をする側の緊張ではありません。

実はつかみによって、漫才を見ている側の緊張を解くことができるんです。それもコアなファンの緊張をほぐすことができます。なぜなら、近しい人ほど、最初の笑いが起こるまで「今日は、大丈夫かな」と緊張してくれているものだからです。