Q2 「腸にはプロバイオティクスがいい」とは何のこと?本当にいい?
答え プロバイオティクスとは、世界保健機関(WHO)および国連食糧農業機関(FAO)による定義では、「適切な量を摂取することで健康によい影響を与える生きた微生物」となっています。
代表的なプロバイオティクスにはよく知られるように、乳酸菌とビフィズス菌があります。乳酸菌は主に乳酸を産生する菌の総称で、「ラクトコッカス属」「ストレプトコッカス属」などに分類されます。かつて多くの菌種を含んでいた「ラクトバチルス属」は、2020年の改訂で複数の新しいグループに再編されました。なお、ビフィズス菌は分類群が異なり、「ビフィドバクテリウム属」に属します。
プロバイオティクスは、ヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメント、処方薬などに活用され、腸内細菌叢のバランスを整えて腸の働きを助け、病原菌を排除したり、増殖を抑えたりする作用が期待されています。
ただし、注意するべき点がいくつかあります。プロバイオティクスが働くには、定義にあるように、「生きた」まま十分に存在する必要があります。
食品として口から摂取した場合、胃を通過する際に大部分の菌は胃酸で死滅します。そのため、菌の「死がい」が腸に到達し、これがかえって腸に悪影響を与える可能性も指摘されています。
さらに海外の研究では、急速な市場拡大に伴い、品質や安全管理が不確かな製品も出回っているとの報告もあります*3。
日本でも、公的医療保険適用の処方薬以外の食品やサプリメントなどに対しては法律による規制が十分ではなく、品質が保証されていない製品も少なくないのが現実です。
プロバイオティクスとしての有効性の証明について、「査読(peer review)付きの学術雑誌」(投稿された論文の内容を執筆者とは別の複数の専門家が精査して評価するシステムがある雑誌)に掲載されるなど、有効成分が確認された食品は「トクホ(特定保健用食品)」として承認されることで一種の差別化がされるようになっています。
ただ、販売メーカーによるPRの言葉や、安くて手軽であること、通販で海外からの輸入サプリメントが手に入りやすいなどの理由で、市販のプロバイオティクスに飛び付くことには注意が必要です。
厚生労働省が運用する公式サイトでも現在、「米国食品医薬品局(FDA)は、プロバイオティクスに対して、いかなる健康強調表示も認めていないことを認識しておくことが重要」と警告しています*4。FDAはアメリカの食品や医薬品の審査・承認・管理をする公的機関です。FDAが発する情報は、日本を含め、国際的に参考とされてよく取り上げられます。
また、プロバイオティクスに対して、プレバイオティクスという考えもあります。プロバイオティクスが微生物を指すのに対し、プレバイオティクスとは、「有益と考えられる腸内細菌の増殖に役立つ、腸まで届く食品成分」を指します。
たとえば、オリゴ糖や食物繊維の一部など(人工の食物繊維であるポリデキストロースや難消化性デキストリン、ニンニクや玉ねぎに含まれるイヌリンなど)がプレバイオティクスとしての定義を満たす食品成分となります。このプレバイオティクスは、イギリスの微生物学者・ギブソンらによって1995年に提唱され、時代背景や科学の進歩によって少しずつ変化し、現在のとらえかたになっています。













