ボクシングジムで被害に─レイカさん(仮名)の事件

ここからは性犯罪の被害者の代理人として手がけた事件を紹介します。性犯罪に遭うとはどういうことか、司法制度の問題点や課題、そしてその被害がその後の人生にもたらす大きな影響と、代理人がつくことで多少なりとも被害の回復ができるということも皆様に知っていただけると思います。

シングルマザーのレイカさん(仮名)は30代半ば(事件当時)、とても活発で明るくハキハキした性格の爽やかな女性です。

ある日、ダイエット目的で通っていたボクシングジムに忘れ物をしたことを、帰宅後になって気づいたレイカさんは、ジムに電話をしました。すでにジムの営業時間は終了していましたが、電話に出たオーナー(50代男性)から「取りにきていいよ」と言われたためジムに行き、忘れ物を見つけて帰ろうとしたところをオーナーにいきなり襲われました。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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上半身の服や下着を剥ぎ取られ、胸を触られたり、舐められたりしながらも1時間近く必死に抵抗をして、なんとか相手に性交は諦めさせて帰宅。数日後にレイカさん自ら警察に電話したり、自治体の法律相談に行ったりしましたがうまくいかず、かかりつけの医師にその話をしたところ「それは犯罪だから法テラスというところを調べてみて」と言われたそうです。

そこでレイカさんが法テラスの電話相談で事情を話したところ、とてもきちんと話を聞いてくれたうえで、レイカさんの「女性弁護士を紹介してほしい」という希望通り、私が紹介され、事務所にいらっしゃいました。

ここで一つ、弁護士としてお願いしたいのは、このような被害に遭った時には恥ずかしがらず、恐れず、速やかに、できれば被害の直後に警察に届け出てほしいということです。

気持ちが悪いと思いますが、相手の体液や体毛を採取できることもありますのでシャワーを浴びたり、うがいをしたりせずに、そのまま警察に行くか、110番通報してください。そこから警察が協力病院に連れていってくれ、証拠の採取や怪我をしていればもちろん治療もしてくれますし、膣内に射精をされてしまった場合は、妊娠を避けるための緊急避妊薬(アフターピル)も処方してくれます。全て公費で負担されます。

また、被害時に着ていた服や下着も捨てずに、洗濯もせずに取っておくこと。もし洗濯をしてしまっても、一回ぐらいなら体液が残っていることもありますので諦めないでほしいです。被害を思い出させるものは早く処分したいでしょうが、被害時の衣服は犯罪を立証する重要な証拠となりうるのです。

犯罪被害に遭ってしまった場合でも、こうした知識を持つことが自らを助ける備えとなりますので、ぜひ覚えておいてください。