諦めないことの大切さ
レイカさんは被害者参加をし、私は被害者参加弁護士として公判に挑むことになりました。公判になると案の定、被告人であるオーナーは証言を覆し、自らの行為がレイカさんと合意のうえであったと言い出しました。
けれど、途中でレイカさんが嫌がっていたのが分かったのでやめました、という弁解です。
自らズボンを下げたにもかかわらず、「太っていてお腹が出ているので勝手に脱げた」などと身勝手かつ滑稽な言い訳を繰り返し、裁判官にも呆れられていました。判決は実刑で懲役2年4か月。レイカさんが勝ちました。
公判の時、レイカさんと私はお揃いの赤い勝負パンツで臨みました。レイカさんが「2人で気合を入れよう」と用意してくれたものです。前日の夜、お互いに「赤パンツ装着!」「こちらも装着済み」などと冗談めかしたメールを送り合ったことも思い出に残っています。
レイカさんとは今でも時々連絡を取り合っていますが、裁判が終わってしばらくしてから、嬉しい話を聞きました。被害に遭ってから見ることができなくなってしまった大好きなボクシングの試合を、再び観戦することができたそうです。
一度は諦めながらも、再び奮い立ち、自らの被害に向き合ったレイカさんの強さに、私は今も励まされ続けています。犯罪被害に遭ったという事実は消えませんが、そのことに区切りをつけて前に進むために、刑事裁判に被害者参加をして向き合うことはとても重要だと、レイカさんの姿を見て私は確信することができました。
この事件では「刑事損害賠償命令の申立て」も行いました。この制度は、刑事裁判を担当した裁判所が、有罪判決だった場合にその被害の損害賠償についても審理する制度です。刑事裁判の成果をそのまま利用できるため、改めて民事訴訟を起こす必要がなく、被害者の負担が軽減されます。
一審判決で有罪となったあと、オーナーは賠償金を支払うと言ってきました。裁判所が命じた金額は、こちらが請求した金額の3分の2でしたが、実刑となったことに慌てたのか、任意でその差額を上乗せして全額を支払うと言うのです。
この賠償金を受け取るかどうか、レイカさんと私はとても迷いました。なぜなら、もし被告が控訴した場合、被害者が賠償金を受け取ったことが控訴審での判決に影響を与えるからです。結局は受け取ることにしましたが、控訴審でオーナーは否認していた犯行をあっさりと認め、実刑を免れて執行猶予付きの判決となってしまいました。
レイカさんは「お金を受け取らなければよかった」と、とても悔しがりました。
もちろんその気持ちはよく理解できるのですが、被告人は一審の時点では全く起訴事実を認めるそぶりがありませんでしたし、賠償しなくても、控訴審で罪を認めて謝罪するだけで執行猶予が付く可能性も大いにありました。結果的に執行猶予となりましたが、一審で実刑を勝ち取ったということに変わりはありません。
私は、賠償金を支払わせることも、加害者が罪を償う方法としてとても重要なことであると考えています。日本では損害賠償について「お金で解決なんて」「結局は金目当てか」などと否定的に捉える人が多いのですが、被害者にはそれを求める権利があります。













