収入で見ると走行距離課税は不公平?

走行距離課税で打撃が大きいのが、地方に暮らす人々と物流の事業者だ。

福井県や富山県の自動車の世帯当たりの普及台数は1.6を超えている。1世帯で1台以上持つのが常識であり、生活には車が欠かせない。一方、東京都は0.4、大阪府は0.6だ(自動車検査登録情報協会「自家用乗用車(登録車と軽自動車)の世帯当たり普及台数」)。交通網の発達した都市部ほど車を持つメリットが少なくなる。

しかし、賃金を多く貰っているのは都市部の人々だ。現在の東京都の平均賃金は403万7000円で大阪府は348万円。福井県は290万9000円、富山県が295万2000円である(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)。

神奈川県逗子のガソリンスタンド(今年6月) 写真/shutterstock
神奈川県逗子のガソリンスタンド(今年6月) 写真/shutterstock
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つまり、走行距離課税を導入すると、所得水準の低い世帯に重い負担を強いることにもなりかねず、不公平感が生まれやすい。過疎化が進む山間部やへき地の年金生活者などは特に苦しめられるはずだ。

そして事業者への影響も大きく、負担の一部はサービスに転嫁されると考えるのが普通だろう。物価上昇に拍車がかかる懸念もあるのだ。

選挙期間中に野党が掲げた暫定税率廃止という甘い言葉は、増税という苦味を伴って現実のものになろうとしている。どのような案であれ、老朽化したインフラの整備には建設的な議論が必要になるだろう。

取材・文/不破聡