少数与党という立場を利用しての巧みな看板替え

暫定税率の廃止について、与党側は恒久的な財源の増税が必要との立場を崩していない。宮沢税制調査会長は8月21日の協議を終えた後、「与党だけで具体的な税は決められず、知恵を出し合わなければならない」と記者団に語っている。

さきの参院選で惨敗した与党が暫定税率廃止の合意に至るスピードは速かった。しかし今となっては、劣勢という立場を与党が巧みに利用しているようにさえ見える。少数与党になったことで、ガソリン減税の合意形成には野党の協力が欠かせない。そのうえで代替財源が必要との立場を与党が堅持すれば、ガソリン減税を人質に野党が組み立てた恒久財源の確保ができるというわけだ。さらに、ガソリンの“暫定”税率という隙だらけの制度も恒久的なものへと看板替えもできる。

暫定税率はもっと早い段階で恒久財源化するべきものだったが、世論の反発を恐れて踏み込むのを怠ってきた。今、ピンチをチャンスに変えようという意図が見えてくる。

8月に入り内閣支持率がV字回復している石破茂首相 写真/共同通信社
8月に入り内閣支持率がV字回復している石破茂首相 写真/共同通信社
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 ガソリンの暫定税率は2009年に一般財源化された。しかし、一般財源化された後も主に道路や橋、トンネルなどのインフラ整備、公共交通の維持と補助に使われている。

今年1月、埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故はインフラの老朽化が引き起こす問題を改めて国民に突き付けた。また、災害が多発して甚大な被害を受けている現状を鑑みても、インフラ投資に財源の確保が必要なのは明らかである。

朝日新聞によれば、新税によって集めた税金はインフラの維持や補修等を負担する地方自治体に手厚く分配することを検討しているという。目的税化してインフラ整備に必要な税金であることを強くアピールしていくようだ。

道路の整備に必要な税金となれば、その受益者である自動車の利用者が負担するのが筋だろう。そうした背景もあって、SNSでは「走行距離課税」を導入するのではないかという議論で盛り上がっているのだ。