自民党を手厚く支援する2団体からの板ばさみ

走行距離課税とは、ガソリンや軽油、電気などエネルギーの違い、排気量、車種などに関係なく走行距離に応じて課される税金だ。アメリカの一部の州ではすでに導入されている。

課税ロジックは単純なもので、「電気自動車やエコカーは燃料税負担が少ないにもかかわらず、ガソリン車と同じように道路を使えるのは公平性の観点からおかしい」といったものだ。距離であれば、道路を多く使う人がインフラ整備に必要な相応の負担をしていることになる。

将来的に電気自動車や燃料電池車が普及することになれば、ガソリン税の先細りも懸念されていた。2022年10月20日、参議院予算委員会で鈴木俊一財務大臣(当時)が走行距離課税について、1つの考え方だと言及した。

この走行距離課税を熱望している団体がある。自民党への献金額が多いことで知られる石油連盟だ。石油連盟はENEOSや出光興産など大手石油会社で構成される業界団体である。連盟は「令和7年度税制改正要望について」において、欧米では走行距離課税が導入・検討されているとしたうえで、「わが国も自動車用の電気等に対し自動車燃料税相当の課税を行ない、EV等とガソリン車等の課税の公平性を確保すべきです」と提言している。

神奈川県逗子のガソリンスタンド(今年6月) 写真/shutterstock
神奈川県逗子のガソリンスタンド(今年6月) 写真/shutterstock

一方、走行距離課税に反対の立場を示しているのが、同じく自民党に巨額の献金を行なっている日本自動車工業会だ。自動車・二輪メーカー14社によって構成され、政治や経済に強い影響力を持つ団体である。2022年に当時の副会長だった永塚誠一氏が「拙速な導入には断固反対する」と宣言。電気自動車の普及にブレーキをかけるような税制を牽制した。

板挟みになる中で、自民党は走行距離課税についての具体的な言及を避けてきた。しかし、野党を巻き込んで案の1つとして議論を活発化させ、国民や支持団体の反応を見極める機会を得ることができたのではないか。