NHKの受信料収入も減少傾向

一方、受信料収入で成り立つNHKの経営は、民放の市場原理とは全く異なります。今度は、NHKの経営を収入の面から分析してみます。

これは、過去16年間のNHKの経常事業収入です。この中には受信料以外の収入もわずかに含まれますが、ほとんどが受信料収入だと考えて構いません。

NHKの経常事業収入
NHKの経常事業収入
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2018年をピークとしてゆっくりと減少する傾向にあることが分かります。NHKは公共放送という性格上、収入が増えても「受信料値下げ」の方向に圧力がかかります。実際、2012年、2020年、2023年に受信料の値下げが行われており、その都度、収入が減少しているのが分かります。

かつては衛星放送の普及とともに受信料収入も右肩上がりだった時代もありましたが、当時とは社会情勢や国民の意識も変わっており、収入を積極的に伸ばし、規模拡大を目指す、というわけにはいかなくなっています。

そして、将来NHKの収支に影響を与える要素として、「人口・世帯数の減少」があります。日本の人口は2008年をピークに減少局面に入っています。これに遅れる形で、世帯数も減少を始めます。

文/今道琢也

『テレビが終わる日』(新潮社)
今道琢也
『テレビが終わる日』(新潮社)
2025年6月18日
968円(税込)
192ページ
ISBN: 978-4106110917

フジテレビをめぐる問題でテレビ界は大揺れだ。しかし、業界全体の凋落は今に始まったことではない。広告収入はネットの半分に落ち込み、まったくテレビを見ない若者が急増、就活人気ランキングでは今や 100位圏外という。反転攻勢をかけようにも、個人の嗜好に強く訴えるネットのコンテンツには歯が立たず、といって海外展開も難しい。かつての「メディアの覇者」に未来はあるのか? データを駆使して徹底分析。

【目次】
第1章  テレビ離れはここまで進んだ
いずれ誰も見なくなる?/国民16%がリアル視聴をやめた/録画でも視聴時間を補えない/激減する10 代、20 代の視聴/7割以上がネット動画を優先テレビ番組は「補欠要員」に

第2章  落ち込む収入、広告はネットの半分に etc.
供給量が増えれば価格は下がる/人口減少が経営を直撃/海外への進出も困難/系列を超えて進む効率化 etc.

第3章  就職人気ランキング100位から消滅
マスコミの中でも取り残される/民放連も指摘する採用難/今も好待遇なのだが…/「すごくブラック」「落ち目な感じ」 etc.

第4章  テレビへの信頼性はなぜ落ち込んだのか
やらせ、捏造、誇張、切り取り/「世界の中心」という錯覚/ネタ探しに追われる日常/飲み会費用38万円を経費として精算/テレビは「既得権者」/最後の「護送船団方式」 etc.

第5章  テレビからネットへ、なぜ主役は交代したか
ネット動画の多様性/嗜好に合ったディープな内容/中途半端さはテレビの宿命/パーソナル化は止められない/技術革新による淘汰 etc.

第6章  テレビに残された優位性はあるのか
ネット企業進出で崩れる優位性/国際スポーツ中継はどうなる/AIによる動画生成の衝撃/競合品が無限に生産される etc.

第7章  テレビが終わる日
船底に穴が空いたタイタニック/20年後の衝撃的な未来像/「岩盤支持層」の入れ替わり/「鉄道会社」型の企業に/テレビなき時代は来るか etc.

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