利益率は20年で半減

テレビが、映像を家庭に配信することのできる唯一の媒体であった時代には、広告放送は大変優位性のあるビジネスモデルでした。放送事業は免許事業であり、他社が参入することもなく、寡占状態でビジネスを展開できました。しかし、今のように動画共有サイトが乱立するようになればその優位性も失われてしまいます。

民間の地上放送の事業者と、全産業の「売上高営業利益率」の推移を見ると、2008年はリーマンショック、2020年は新型コロナの影響を受けてグラフの変動が激しくなっていますが、長期的に見ると、地上放送事業者の利益率は下落傾向にあることがうかがえます。かつて10%近くもあった利益率は、直近では4%台にとどまっています。

民間の地上放送の事業者と、全産業の「売上高営業利益率」の推移
民間の地上放送の事業者と、全産業の「売上高営業利益率」の推移

全産業との比較で見てみるとその退潮傾向は一層顕著です。2001年には、全産業の営業利益率が2.2%だったのに対し、地上放送事業者は9.6%もありました。テレビ業界の利益率は、全産業平均の4.3倍もあり、極めて利益率の高い産業、すなわち、「稼げる産業」だったのです。

しかし、全産業の利益率はその後上昇していき、直近では4.0%になっています。これに対して、地上放送事業者の利益率は下落傾向で、直近では4.9%にとどまります。その差は1ポイントを切っています。

ほかの産業がこの20年ゆっくりと利益率を高めてきたのに対して、テレビ業界は逆に下げてきた、ということです。グラフの変動が大きいため、もうしばらく時間を掛けて動向を見極める必要はありますが、テレビという産業が相対的に稼ぎにくい産業になりつつある、ということは確かなようです。

フジテレビのCM差し止めはまだ続いています。2025年1月末時点で311社がスポンサーを降り、2月の広告収入は前年に比べて9割減となっています(「毎日新聞」2025年4月1日付記事)。年間を通じてどれだけの影響が出るのか、明らかになるのはまだ先のことですが、地上波の広告収入や営業利益率に影響を与えることは間違いないでしょう。