2割の企業が来年度の賃上げを見送り 

厚生労働省によると、2025年5月の実質賃金は前年同月比で2.9%の減少で、5カ月連続のマイナスだった。名目賃金は1.0%増で41カ月連続のプラスだったものの、物価上昇を加味した実質賃金は2023年9月以来の低い水準であり、物価上昇に賃上げがまったく追いついていない。

そこに賃上げ圧力が低下するという、最悪な材料が迫ってきたわけだ。

東京商工リサーチはトランプ関税に関するアンケートを実施している。関税引き上げの影響が「大いにマイナス」と回答した企業は11.8%、「少しマイナス」は45.8%であり、「マイナス」の合算は57.6%に及んでいる。ゴム製品製造業や鉄鋼業、非鉄金属製造業などへの影響が大きいようだ。

雇用や採用に影響が出ると回答する企業もあり、正社員の削減がおよそ2%、非正規社員の削減は3%、採用の抑制は10%だ。中小企業は3300万人の雇用を支えているが、2%の削減は単純計算で66万人にも及ぶ。

肩を落とすサラリーマン
肩を落とすサラリーマン

そして賃金面では、ボーナスの増額の見送り・増額幅の縮小が12%、ベースアップの見送り・引き上げ幅の縮小は11%だった。1割を超える企業が賃上げに後ろ向きなのだ。しかもこの数字は今年度のものであり、来年度はどちらの回答も2割近くまで上昇している。

物価高が進む中で、名目賃金すら上がらないという時代が視野に入ってきた。そうかといって、インフレが収まる気配はない。ウクライナ紛争は依然として終息せず、中東情勢は緊迫感を高めている。日米の金利差を背景とした円安も続く見通しだ。