「犯罪史上まれに見る悪質な犯行」と死刑

確定判決によると白石死刑囚は2017年8月から10月の間、同市内の自宅アパートで男性1人(当時20歳)と女性8人(同15〜26歳)の首をロープで締めて殺害、現金を奪い遺体を切断解体してゴミ集積所などに遺棄した。女性8人については全員に性的暴行を加えていた。 

白石隆浩死刑囚
白石隆浩死刑囚
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裁判員裁判で行われた東京地裁立川支部の公判では、白石死刑囚の弁護側は被害者が殺害に同意していたとして刑の軽い承諾殺人罪の適用を主張。

しかし2020年12月の判決では被害者はいずれもいきなり襲われ、殺害されたとして弁護側の主張を退け、所持金を奪ったり性的欲求を満たすためにSNSで誘い出し、遺体を解体遺棄して証拠隠滅を図った「犯罪史上まれに見る悪質な犯行」と死刑を言い渡した。

その後、弁護側は判決を不服として東京高裁に控訴したが、白石死刑囚が取り下げ、2021年1月に死刑が確定していた。

白石隆浩死刑囚
白石隆浩死刑囚

鈴木法相は6月23日に執行命令書にサインしたといい、その理由を「性的、金銭的欲求を満たす身勝手な理由から、約2カ月の間に9名もの尊い人命を奪い、社会に大きな衝撃を与えた。ご遺族の方々にとっても無念このうえない事件だ。法務大臣として、慎重なうえにも慎重な検討を加え、死刑執行を命令した」と述べた。

この事件を取材、被告段階の白石死刑囚と拘置所で面会を繰り返し『冷酷 座間9人殺害事件』(幻冬舎アウトロー文庫)を著したノンフィクションライターの小野一光氏は、死刑執行の報を受けてこう語った。

「僕が彼に会ったのは2020年の7月から9月の間の計11回になります。場所は立川拘置所です。まず話してみて驚いたのは、彼が『普通』だったということですね。9人も殺している犯行内容と本人の印象が結びつかない『軽さ』があったというか……。ただ、事件の話になると腕を組んで、目をつぶって下を向きながら話すような感じで。そのときはやはり雰囲気が変わりました」

小野一光氏の著書『冷酷 座間9人殺害事件』
小野一光氏の著書『冷酷 座間9人殺害事件』