家族の悲劇を描き切った
『ゴッドファーザー』は家族の物語である。緊密に結びついていたように見える大家族が、やがて一人ずつそのメンバーを失い、やがて離散瓦解する物語である。そのことに異存のある方はいないだろう。家族たちは、ある者は死に、ある者は殺され、ある者は家族を憎み、あるいは家族に憎まれる。
第一作では、ファミリーの後継者である長男ソニー(ジェームズ・カーン)が殺され、偉大な家父長ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)が病で死ぬ。三男マイケルはシチリアで結婚した新妻アポロニアを目の前で爆殺される。長女コニー(タリア・シャイア)の夫カルロはマイケルに殺される。
第二作では、妻ケイ(ダイアン・キートン)が夫マイケルに知らせずに子どもを中絶したことから夫婦は危機的な関係になり、コルレオーネ家を情緒的に統合していた母が死ぬと、マイケルはファミリーを裏切った次兄フレドを殺す。
第三作ではマイケルはシチリアにおける彼の保護者だったドン・トマシーノを殺され、娘メアリー(ソフィア・コッポラ)を殺される。
マイケルを中心に見ると、彼の家族は『ゴッドファーザー』サーガの間に、父と母が死に、長兄が殺され、自分の手で妹の夫と次兄を殺し、妻には子どもを殺され、父代わりだった人を殺され、最後には娘を殺される。なんとも殺伐とした人生である。
物語の最後でマイケルに家族として残されたのは、息子アンソニーと妹コニーと甥のヴィンセント(アンディ・ガルシア)だけである。
だが、息子は優しい伯父フレドを父が殺したことを許せずに家族を離れており、コニーは兄が自分の夫を殺したトラウマを引きずっており、ヴィンセントはファミリーを引き継ぐ時に、マイケルからメアリーを諦めること、つまり「家族にならないこと」を条件として求められている。
つまり、『ゴッドファーザー』はコニーの結婚式にコルレオーネ・ファミリーが全員集合する場面から始まり、家族すべてを失ったマイケルの孤独を描いて終わるという、ひたすら家族が痩せ細ってゆく物語なのである。なんと。