食中毒かも?と思ったら
――鹿児島に生で鶏肉を提供する鳥刺しについて、基準もしくはルールはあるのでしょうか。
鹿児島県庁生活衛生課 鹿児島県公式ホームページの「生食用食鳥肉の衛生基準」にも衛生管理基準の詳細が載っていますが、サルモネラ、カンピロバクター、ブドウ球菌などが陰性であること、しっかりと食鳥検査をすること、洗浄・殺菌・温度管理の方法、食鳥肉を生食用として販売する場合の食品表示基準などが設けられています。
法律で決められたものではないため罰則はありませんが、目標であり、こういう取り扱いをしようというものになります。食中毒が出た場合には、保健所の調査などしかるべき対応を致します。
実際に今回食中毒を起こし、3日間の営業停止処分となったラーメン店を管轄する神戸市食品衛生課にも、食中毒にかかった場合の対処方法を尋ねた。
――消費者が食中毒かも? と思った場合は、どのように対処するべきでしょうか。
神戸市食品衛生課(以下同) 食中毒に罹ってしまったということであれば、最寄りの保健所に連絡いただくというのが、まず最初に行なってほしいことです。そこから担当所管に申し送りをさせていただきまして、担当者から折り返しご連絡ということになります。
飲食店の提供した食品が食中毒の原因と判断されれば調査が入って、指導が入ることがあります。ただ、地域によっては保健所の対応が変わることもありますので、ご相談ください。
――神戸市では飲食店での鶏肉の生肉の取り扱いに関して明確な基準はあるのでしょうか。
牛肉のレバーや豚肉については明確な基準があるのですが、鶏肉については加熱不十分で提供することが禁止という規制はありません。けれども、加熱不十分の鶏肉によって身体異常が起きて、原因物質として確定した場合には、その店舗は食品衛生法上の法違反で罰則の対象になります。今回は、3日間の営業停止処分とさせていただいております。
生または加熱不十分の鶏肉を出したという行為自体は、法律で禁止されてませんが、カンピロバクターの危険性があるので、生や加熱不十分な鶏肉は提供、実食するのはやめてくださいねという啓発は日ごろからさせていただいております。
今回の罰則については、法令として食品衛生法の第6条第3号に規定があるように、「病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの」の調理販売というのに違反したということで、営業停止処分とさせていただきました。
――生または加熱不十分の鶏肉で食中毒を起こしてしまったら罰則ということですが、牛肉のレバーや豚肉についての基準に対して、鶏肉は事前には基準が分かりづらいように感じます。
そうですね、仰る通りです。例えば九州の鹿児島県や宮崎県では鶏を生で食する「鳥刺し」、「鳥のたたき」などが、その地場で有名な産業になっていると思うのですが、そこでは鶏肉の処理の仕方の取り決めがあると思います。
ただ、全国的には、鶏は加熱不十分で出してはいけないという法令がないんです…。神戸市の方でも鶏の処理基準も設定はしていません。加熱不十分な鶏は出さないでください、食べないでください、という周知・啓発を一生懸命行なっているところではありますが、何か条例などで定めているということはありません。
――他県の事例も含め、過去に食中毒が起きているにもかかわらずなぜ鶏肉は基準が無いのでしょうか。
そこはいろいろな自治体の方からも国の方に要望を出している状態です。やはり鹿児島県のように地場の産業としてやられている地域もありますので、一律に禁止をするということには至っていないのが現状なのかなというのが私見ではあります。
神戸市としては「中心部の色が十分に変わるまで、75℃以上で一分半以上過熱をして提供して下さいね」という指導は実施しています。神戸市のホームページでも、食中毒予防として加熱不十分な鶏肉は食さないようにとの記載はしています。
――今回3日間の営業停止処分というのは妥当なのでしょうか。
この営業停止は、施設の清掃ですとか、衛生管理についての教育ですとか、今後営業するにあたって適切な飲食物を出していただくための指導をする期間ということで、3日間と設定しております。
製造方法についても確認しまして、ちゃんと中心部まで加熱しているかの確認・指導はさせていただいております。
生の鶏肉の提供が法律で禁止されていない以上、飲食店で提供された場合、それを食するか否かは消費者自らが判断する必要がある。
万一、食中毒と疑われる症状が出た場合には、直ちに病院や保健所に相談するべきだろう。これからの暑い季節の食事にはいっそう注意を払う必要がある。
取材・文/小島ゆう