財政効率化を図りたい財務省の思惑とは

――多くの学校が廃校になっていると聞きます。

危険なのは、私立高校の無償化が、公立高校の熾烈な統廃合とセットで行われてきたことです。

実際、大阪府の公立高校は過去20年余りでおよそ40校が廃校となり、2025年4月時点では21校の新たな廃校が決定しています。今後の統廃合の検討対象となっている高校も多く、さらに多くの公立高校が廃校となる見通しです。

そして、危険なのは、このような維新モデルが、少子化を理由に学校統廃合を進め、財政効率化を図りたい財務省の思惑と一致するということです。

大阪府では、大規模な公立高校の統廃合と同時に、学区の撤廃ならびに公立と私立の募集定数比率の撤廃も行われました。つまり、生徒は大阪府内であればどこの学校でも選ぶことができ、3年連続定員割れの公立高校は容赦なく廃校にされ、公立高校と私立高校の生徒数の比率が逆転する可能性もあるのです。

そんな中で私立高校を無償化すれば、学費の面で私立と公立の境界が溶け、一つのきれいな「市場」が出来上がります。

大阪大学の髙田一宏教授は、2010年に橋下府知事(当時)が発したメッセージ「「教育」への私の思い」に注目しています 。

橋下氏は、私立高校の授業料無償化措置について次のように述べています。

「この制度の導入によって、いよいよ、公私が切磋琢磨するための同一の土俵ができあがる。これからは、公立も私立も、誰が設置者かではなく、学校そのものが生徒や保護者から選択される存在でなければ生き残れない。もはや、「公私7・3枠」で生徒が入学してくるという状況は保障されない。大阪の学校勢力図は大きく塗り替わる。」

実際、制度導入後には公私の比率が6対4と変わっており、髙田教授は、近い未来に公私の入学者比率の逆転もあり得る、と指摘しています。

また、どれだけ多くの生徒を確保できるかが全てとなるわけですから、私立高校も無償化するのであれば、公立も私立も関係なく、同じ土俵の上で競争し、勝ち残らなければなりません。

維新と財務省の思惑が一致する「私立高校無償化」…学力的に厳しい子や不登校を経験した子達が多く集まる高校が消えてゆく_2

そうなれば、今日の厳しい格差社会の縮図のように、「勝ち組」「負け組」の厳しい生存競争となり、私学はしだいに個性を失っていくでしょう。そうして残るのは、教育の多様化などではなく、単なる学校の序列化です。