ベストセラー作家が「ちゃんと話、聞いてるの?」はNGと断言する理由…無表情でうなずきもしない、反応の薄い部下とどう付き合えばいいのか
あなたの職場に、話を聞くときにうなずかない若者はいないだろうか。表情に乏しく、何を言っても反応が薄い。しかし「ちゃんと聞いているの?」と叱責でもしようものならハラスメント扱いされかねない――。しかし、彼らの脳の中で起こっていることを理解すれば、うまく付き合うことができるという。
黒川伊保子氏の著書『対話のトリセツ ハイブリッド・コミュニケーションのすすめ』から抜粋・再構成して、“話を聞かない若者”の対処法を解説する。
『対話のトリセツ』#3
反応の弱い部下に仕事をしてもらうコツ
「なんでやらないの?」も、言われたほうは意味がわからない。指示されていないのにやらないことを、叱られる意味がわからないのである。ときには、「私の職場では、誰も仕事を教えてくれないのに、やらないと叱られる。ハラスメントを受けています」と申請してくることもある。
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反応の弱い部下を持っても、「話、聞いてるの?」と詰め寄らないで。話を聞いているのか気になったら、メモを取るように指導しよう。「私、メモを取らなくても大丈夫なんで」と言われたら、「職場では、メモは、相手のためにするもの。話を聞いてますよ、安心してくださいのジェスチャーです」と教えてあげてほしい。
「なんでやらないの?」と思ったら「これ、あなたがやるべきことよ、覚えておいてね」と言えばいい。直感的な最初の気づきがないだけで、やるべきことを教えてあげれば、やがて、関連した、ほかのことにも気づくようになる。「気が利かない」は最初のうちだけ。少し根気が要るが、ちゃんと育ってくれる。
ミラーニューロン活性レベルが高いと、気が利くし、仕事の飲み込みが速い。一方で、人の表情が気になって、自分の意見が言えなかったりする。
ミラーニューロン活性レベルが低いと、気は利かないが、自分の意見を躊躇なく言えるし、国際舞台でのびのびと活躍したり、明るくタフな営業パーソンにもなれる。
一概にどちらがいいとは言えないのである。日本人は民族としての特性を勘案するに、ミラーニューロン活性レベルの高い民族だった。気が利くし、匠の技の暗黙知(ことばにならないコツ)の伝承もうまい。けれど、一方で、忖度の国とも呼ばれている。もしかすると、1997年以降に生まれた世代は、国際標準に近づいているのかも。
文/黒川伊保子
対話のトリセツ ハイブリッド・コミュニケーションのすすめ
黒川伊保子
2025/4/3
990円(税込)
216ページ
ISBN: 978-4065393666
上司と部下、先輩と後輩、取引先、夫婦、親子……、いつも会話がすれ違うのは、じつは対話の様式が大きく違っているから。累計100万部超の「トリセツ」シリーズ産みの親が、満を持して書き下ろしたコミュニケーションの秘訣。
たとえば会社で部下として上司に話しかけるとき、家庭で妻として夫に話しかけるとき、親として子どもに話しかけるとき、人は無意識に置かれた立場によって2つの対話の様式を使い分けている。そしてそのとき、人はもう一方の対話様式のことに思いがいたらない。
なぜコミュニケーションはすれ違うのか、なぜ相手にイラっとするのか、なぜわかってもらえないと嘆くのか、すべてはこの対話様式の違いから始まっている。
長年の感性研究から見出された「タテ型」と「ヨコ型」という2つの神経回路。どちらも人類の生存に必須の2つの神経回路の違いが対話様式の違いにもつながっている。
その対話様式の違いを意識し、場面によってハイブリッドに使い分けをすることで、コミュニケーションが変わり人間関係も劇的に改善。全国民必読の対話の教科書。