うなずかない若者は、人類の進化系

1997年生まれ以降のすべての人に、コミュニケーション反応の低下が見られるわけじゃないし、このあと詳しく述べるけど、コミュニケーション反応は弱いからダメというものでもない。利点もあるのである。

とはいえ、世代全体の雰囲気であることは間違いない。このことは、おそらく、幼少期にミラーニューロンを使う機会が、1997年以前に生まれた人たちのそれに比べて減ったことに起因すると思われる。

ミラーニューロンは、赤ちゃんのうちに人生最大に働く。これを使って発話し、歩き出すのである。でも大人になっても、すれ違う人の所作や表情にまでつられていたら危なくてしょうがないので、大人になるまでに、その活性レベルを劇的に落とすわけ。そして、脳では、使わないと信号のコネクションが薄れる。使わない記憶が薄れていくように。

画像はイメージです(Shutterstockより)
画像はイメージです(Shutterstockより)

つまり育った環境で、あまりミラーニューロンを使わなければ、不活性度が大きくなる。SNSやゲームの隆盛で、親と子、子ども同士が面と向かってコミュニケーションする時間が減っている以上、ミラーニューロンの活性レベルにも、当然、差は生じるはず。ちなみに、1997年、何が起こったのか調べたら、携帯のメールサービスが始まった年だった。

ならば、これはもう人類の進化である。ミラーニューロンが従来ほど活性化していない世代は、進化型なのである。

「話、聞いてるの?」は死語と心得よ

「話、聞いてるの?」「やる気あるの?」「なんでやらないの?」は、時代の死語と心得よう。相手は、聞いているのだけど、上の世代にはそう見えないだけ。やる気はあるのだけど、上の世代にはそう見えないだけ。この質問、話を聞いている者、やる気のある者には答えようがない。

また、ミラーニューロンの活性度が違うと、「なんでやらないの?」という不満も生まれる。ミラーニューロンは、他者の動きを自分の神経系全体で感じ取るので、ミラーニューロン活性レベルが高いと、何も言われなくても、他人の動きに気づいて「あ、それ、私が運びます」のように手を添えることができる。ミラーニューロンの活性レベルが高い上司は、自分なら黙っていても片付けるのに、なんでこの新人はやらないんだ? と感じるわけ。