自らの成熟のために

ラテン語 1作目の『世界はラテン語でできている』を発表した後、ラテン語さんとして生きていくという思いが強くなり、それまで公開してこなかった自分の顔をメディアに出すという決断もしました。

本を出すまでは顔出しNGと編集者に伝えていたのですが、顔を出したほうが認識されやすい部分もあると思い、加えて顔出しを求めるメディアが多かったこともあって、やっぱり出すことにしたんです。

確かにそれは大きな決断であり、怖く思う気持ちもあったんですが、今では出して良かったと思っています。読者から反応があったし、おかげでいろんなメディアに呼んでもらえました。

ラテン語さん(左)とヤマザキマリさん(右)
ラテン語さん(左)とヤマザキマリさん(右)
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ヤマザキ 賽を投げられて次なる展開に差しかかるわけですが、そこには充足感も伴うということですよね。

ラテン語 そうですね。いよいよこれから先も、ラテン語さんとして生き続けなければいけない。その思いが強くなりました。

ヤマザキ 自らの成熟のためにも良い決断だったのではないでしょうか。これからルビコン川を渡るラテン語さんには、miseris succurrere disco「私は不幸な人々を助けることを学んでいます」の格言について話していた時に言い淀んでいた、人に救われる経験というのも増えていくのではないでしょうか。

直接相対する人だけじゃなく、格言を通じて歴史上の偉人たちに救われることも、これから何度でもあると思いますよ。これだけたくさんの格言を知っていれば、ラテン語さんの前途は大丈夫ですよ。楽しみですね。

*注釈
※1 神聖ローマ帝国 
962年にオットー1世がローマ教皇により戴冠してから1806年にフランツ2世が辞するまで長らく続いたドイツ国家。

※2 フリードリヒ2世
1194年~1250年(皇帝在位:1220年~1250年)。シチリア王でもありイタリア統一を目指したが実現せず。ローマ教皇と対立した。

※3 ルビコン川
アドリア海にそそぐイタリアの小川。カエサルが渡った時、本土と属州を隔てる境界線だった。

写真/shutterstock

座右のラテン語 人生に効く珠玉の名句65
ヤマザキ マリ、ラテン語さん
座右のラテン語 人生に効く珠玉の名句65
2025/1/8
1,045 円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4815628017

すべての悩みはローマに通ず

古代ローマを描いてきた漫画家と、気鋭のラテン語研究者。
ふたりが選びに選び抜き、語りに語り尽くしたラテン語格言の数々。
偉人たちの残した言葉の中に、人生に効く至言がきっと見つかる。

libenter homines id quod volunt credunt
人は自分の信じたいものを喜んで信じる
カエサル『ガリア戦記』

dimidium facti qui coepit habet
物事を始めた人は、その半分を達成している
ホラーティウス『書簡詩』

amicus certus in re incerta cernitur
確かな友情は不確かな状況で見分けられる
キケロー『友情論』(エンニウスの言葉)

……など65点を紹介。

※この対談は本書で初公開の語り下ろしです※

ホラーティウス、キケロー、ウェルギリウス、プリニウス、セネカ、カエサル……。
ローマ人の残した言葉を、二人が読み解いていく、スリリングな対談。
また、古代ローマ時代より後に生まれたラテン語も多数扱う。
二人はどんな時に、どんなラテン語に救われたのか。
創作の裏側にもつながるエピソードも多数明かされる。

はじめに ヤマザキマリ
第1章 人生と友情
第2章 芸術家のエネルギー
第3章 恋愛指南
第4章 ラテン語の表現世界
第5章 生き方について
第6章 為政者たちのラテン語
第7章 歴史の教訓
おわりに ラテン語さん

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