対立する人とコミュニケーションを取り、異論を理解する
ヤマザキ 〝正義〟とか〝正当〟といった、自分勝手な思い込み以外の考え方を遮断し、他の人の異論を受け止められなくなってしまう。この言葉はまさにそうした傾向に対しての警鐘ですよね。
ラテン語 意見を異にする人からも聞くということが、平和は平和でも、戦争という有事に対する平和ではなく、社会の二極化を避けるという、平時における平和的解決のために重要なことだと思います。
ヤマザキ カエサルは、さすが多くの人と関わりを持ち、大軍を引っ張った人物なだけに、人間の心理をよく理解していると思いました。
ラテン語 紹介したのは、『ガリア戦記』※2からの引用ですが、カエサルは他の著作でも類することを言っています。人というのは自分が欲するものを欲して、他人が自分と同じような感覚を持つことを望むものだと。
ヤマザキ こんな言葉を生み出せる人ですから、借金だらけであっても、自分の妻を寝取られても、拒絶されることがない人たらしだったのだと思います。
ラテン語 私がラッキーだったと思うのは、大学生の時にディベートのサークルに入っていたことです。
とあるトピックについて賛成か反対かで議論するんですが、賛成側と反対側のどちらに回るのかはまったくのくじ引きです。自分の意見とは逆の立場になることも多々あります。自身の考えとは違う立場を代表し、代弁し、立場を守り、議論するという経験をしたことで、カエサルの言っている心理に陥らずに済んでいます。
ヤマザキ どっちが正しい、正しくないという真意を探るよりも、まずは対立する人とコミュニケーションを取り、異論をあえて理解してみようと思う意欲、それを失わないことが大切なんだと思いますね。