テレビアニメで大ブレイク

それが2020年のコロナ禍を機に12・65%と一気に増え、23年は30・1%と過去最高を記録しています。以上の数字を見る限り、日本においては、コロナ禍まで男性の大半が乳幼児の子育てに積極参加していなかったと言えます。

共働きが一般化しつつあったけれども、男性が子育てに積極参加していなかった時代に、子育てを助けてくれる最高のヒーロー、それがアンパンマンとその仲間たちでした。だから、アンパンマンがいかに赤ちゃんや幼児の心を捉えるか、実体験で話してくれるのは、私の周りでも9割方は「お母さん」であり、男性で知っているのはお医者さんや看護師さん、保育園の保育士さんといった〝プロ〟に限られていました。

しかし、2020年代の今は違います。アンパンマンの消費の現場を歩くと、お母さんだけではなく、お父さんと一緒に子どもたちがアンパンマンを楽しむ姿は当たり前になりました。アンパンマンの消費スタイルの変化は、日本の子育ての変化を表象しています。

横浜・仙台・神戸・名古屋・福岡と全国5か所にあるアンパンマンミュージアム
横浜・仙台・神戸・名古屋・福岡と全国5か所にあるアンパンマンミュージアム

アンパンマンは、いつから日本の乳幼児の間で巨大な存在になったのか。

大ブレイクしたのはテレビアニメが放送開始してからです。1988年10月。日本テレビ系列でアニメ「それいけ!アンパンマン」の放送がスタートしました。翌89年からはアンパンマンの映画がコロナ禍の2020年を除き、毎年公開されるようになりました。

テレビも映画も大ヒットし、アンパンマンの認知度は一気に向上しました。それに伴い、アンパンマン関連のビジネスも急成長したのです。現在のアンパンマンの人気が始まったのは「89年=平成の時代」から、というわけです。

昭和のアンパンマンの舞台は絵本が中心でした。原作者のやなせたかしが絵本『あんぱんまん』をフレーベル館から出版したのは73年。70年代終わりから徐々に絵本の世界で認知されるようになり、誕生から15年かかってようやくテレビアニメになったのです。

アンパンマンのお客さんは、絵本もアニメも、0歳から4、5歳までの乳幼児が中心です。中でも一人で歩けるようになってから幼稚園に上がるまでの1〜3歳の支持率は極めて高いと言われています。

テレビ放送開始が1988年ですから、アンパンマンを乳幼児の頃から映像で鑑賞した最初の世代は、2025年現在40歳前後でしょう。今の20代から40歳前後の親と子どもはアンパンマンを二世代消費しているケースが多いはずです。