日本にはびこる“子育てペナルティ”が問題に

今年2月に発表された東京大学の研究によると、子どもを持たなかった場合と比較して、子どもを持つ女性の賃金は10年間で46%減少する一方、男性の賃金は8%増加することが明らかになった。この研究結果が公表されると、「子育てペナルティ」という言葉がSNS上で話題となり、日本国内で大きな注目を集めた。

なぜこのようなことが起こるのだろうか。北海道大学公共政策学研究センター研究員で政策・経営コンサルタントの森川岳大氏に解説を聞いた。

「子育てペナルティが起こる背景には、日本の雇用慣行が大きく影響しています。日本では、長期的な雇用を前提に、多様な業務をこなせる人材や長時間労働が重視される傾向があります。そのため、女性が出産や育児によって一時的にキャリアを中断すると、昇進や賃金上昇の機会を失いやすくなります。

さらに、多くの企業では、育児との両立を理由に女性が負担の軽い一般職や間接部門、非正規雇用に移行することが多く、これが所得低下を長期化させています」(森川岳大氏、以下同)

さらに「家事や育児は女性、稼ぐのは男性」といった社会規範や文化も根強く存在し、こうしたバイアスの下では、母親になった女性は能力を過小評価されやすい一方で、父親になった男性はむしろ高く評価される傾向も見られるという。

「子育てペナルティ」を解決するために(画像/ Shutterstock)
「子育てペナルティ」を解決するために(画像/ Shutterstock)

日本の「子育てペナルティ」は、雇用慣行だけでなく、ジェンダーバイアスを含む社会的・文化的要因が複合的に絡み合うことで、国際的にも特に大きな課題となっているそうだ。

ではこれを解決するにはどのような策が考えられるのだろうか。森川氏は「政策、企業の取り組み、個人の意識といった多方面での変化が求められます」と指摘する。

まず政策面では、育児休業制度や保育施設の充実、経済的支援に加え、男性が育休を取得しやすくなる仕組みづくりが重要。スウェーデンでは、育児休業の一部を父親専用としており、「取得しなければ損をする」仕組みにすることで、男性の取得率を大きく高め、母親の就業継続や賃金回復にも効果をもたらしているそうだ。