「Aさんの告発文書の作成と配布を理由とした処分は違法、無効」
告発文書に挙げられた他の5項目については指摘の事実は認められなかったと判断したが、報告書がこれらと並んで重きを置いて調べたのが、斎藤知事が主導して告発文書の発送者をAさんと特定し処分した問題についてだ。
斎藤知事は告発文書の存在を知った直後の昨年3月21日、当時の片山安孝副知事(昨年7月に辞職)ら側近に命じて告発者捜しを指示。メールの解析からAさんに目星をつけた片山氏は、同月25日に事情聴取したAさんに文書の作成と配布を認めさせ、Aさんが使っていた県の公用パソコンを取り上げている。
その2日後の3月27日に斎藤知事は記者会見で、告発は「嘘八百」で、Aさんは「公務員として失格」などと非難。予定されていたAさんの退職をやめさせた県は5月に停職3か月の懲戒処分をAさんに科している。
「それだけではありません。片山氏が取り上げたパソコンの中にあった私的なデータを当時の井ノ本知明総務部長がプリントアウトして県議らに見せて回り、設置直後の百条委では当時維新の岸口実、増山誠両県議がこのデータの開示を執拗に求めました。
彼らはみな“斎藤派”で、私的データの内容を暴露してAさんを貶め、告発には信用性がないと印象づけるためだったとみられます。データ内容が出回ることに苦しんでいたAさんは、昨年7月に自死しました」(Aさんの友人)
斎藤知事らが匿名の告発者を特定し処分した行為は公益通報者への不利益な取り扱いを禁じた公益通報者保護法違反の疑いがあると百条委で複数の専門家が指摘。百条委はこれについて「公益通報者保護法に違反している可能性が高い」と結論づけた。
さらに、同法には処罰規定がなかったが、今回の事件を機に、通報者を処罰した者は6か月以下の拘禁刑を科すなどと定めた改正法案が3月4日に閣議決定されている。
第三者委は斎藤知事らのこの行動についても、百条委以上に踏み込んだ判断を出した。
「まず、Aさんの文書送付が公益通報に当たることを明確にしたうえで、文書に疑惑の当事者として書かれた斎藤知事や片山氏が調査を指示したり処分に関与したりしたことは法の趣旨に反し『極めて不当』と指摘しました。そのうえで、Aさんのメールを調査し事情聴取やパソコンを取り上げたことは『違法である』と言い切っています。
県は取り上げたパソコンの中にあった文書をもとに発見したとする3つの問題行動と、告発文書を出したことの計4つの理由を挙げてAさんを処分しましたが、告発文書の作成と配布を理由とした処分は『違法、無効』と断じています」(地元記者)