石破構文からにじみ出る「悪いインフレ」

2月4日の衆院予算委員会で、立憲民主党の米山隆一氏が今の日本はインフレかデフレかを問う場面があった。日銀の植田総裁は「インフレの状態にある認識」と答えた一方、石破首相は「デフレは脱却できていない。今をインフレと決めつけることはしない」と説明し、両氏の認識の違いが鮮明になった。

石破首相の答弁はいかにも歯切れの悪い「石破構文」だが、そこからにじみ出るのは今の日本が「コストプッシュ・インフレ」(生産コストの上昇により起こるインフレの一種)の状態であるということだ。

石破首相 (石破氏SNSより引用)
石破首相 (石破氏SNSより引用)
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インフレには2つの種類があり、需要が増加して物価が上昇する「ディマンドプル・インフレ」と、コスト高で引き起こされる「コストプッシュ・インフレ」がある。

ディマンドプル・インフレは需要増で企業の設備投資意欲が活発化し、賃金上昇と消費の拡大という好循環が形成される。一方、コストプッシュ・インフレは需要そのものが膨らんでいるわけではないために価格転嫁が需要減退に繋がることが多く、大幅な賃金上昇も望めない。前者は良いインフレ、後者は悪いインフレとも呼ばれる。

結局のところ、政財界では「今の日本は悪いインフレだ」と言いたくないのでないだろうか。特に利上げに積極的な姿勢を見せる植田総裁は、賃金上昇と物価上昇を引き合いに出して良いインフレであることを強調しているようにさえ見える。

石破首相は「デフレは脱却できていない」と発言した。デフレとは需要が減退して企業の収益性が低下し、賃金の減少や横ばいが続くことだ。需要が回復しきっていない一方で、物価は上がっているために「今をインフレと決めつけることはしない」という説明だったたのだろう。