割高なコメを買わされてきた日本
一般的に「日本の農業は手厚く保護されている」と言われているが、これは事実としてデータからもはっきりと浮かび上がる。
関税などによる生産者への間接的な所得移転と、直接支払いによる所得移転をPSE(「農業をサポートする政策措置から生じる、消費者および政府 から農業生産者への年々の粗移転金額」)と呼ぶが、2018年の日本の国民1人当たりのPSEは291ドルだった。
この数値はOECD(経済協力開発機構)の平均である184ドルよりも100ドル以上高い。アメリカは140ドル、中国が131ドルだ(三菱総合研究所「日本の農業生産を維持する国民負担の水準は?」)。
「食料安全保障」という大義名分はあるが、日本全国にわたって農家が自民党の支持基盤になってきたことも確かだ。日本農業新聞が農業者を中心に行なった2024年10月の農政モニター調査によると、石破内閣の支持率は65%(NHKの世論調査では44%)にも及ぶ。
政府は日本の主食であるコメの生産農家を特に重視した。減反政策により、長年支援し続けることで、票田を保護してきたというわけだ。
減反政策とは、コメの価格を維持するために生産調整を行うことで、余剰在庫が積み上がることで、価格暴落を防ぐ狙いがある。政府が生産数量目標を設定し、各農業協同組合(JA)が農家ごとに生産量を割り当てる。
政府は減反に協力する農家に対し、一定の補助金を支給していた。これはもちろん税金でまかなわれているので、国民は間接的に農家を支援し、割高なコメを買わされてきたというわけだ。
こうした潮目が変わったのは2012年のこと。
民主党から自民党に政権交代し、農政改革に取り組んだ第2次安倍内閣が誕生したときだ。TPP(環太平洋パートナーシップ)への参加を表明し、2018年度からの減反廃止を正式決定した。当初は、市場原理に放り込まれたコメの価格は、暴落するとの見方もあったが、実際は価格は維持された。
しかし、これには政府による別の保護政策が大きく関係している。