万博で儲かるのはだれか…経済波及効果を取り込む策とは

─経済産業省は2024年3月、万博による国内経済への波及効果が全国で約2・9兆円だと発表しました。下山さんたちの研究でも効果は2・7兆円〜3兆円超ですが、金額が大きすぎないですか。(2024年7月取材)

下山朗(以下、同) 今回の万博では会場の建設や運営、関連のインフラ整備などに計7275億円(うち国は1620億円、大阪府・市は1344億円、万博協会は1160億円)が費やされます。このほか、私たちは国内外の来場者が使う入場料や宿泊代などを計8913億円と想定し、万博に投下されるお金の総額が約1.6兆円になると考えています。

経済波及効果はこうした投下総額をもとに、産業ごとの取引の流れを示す「産業連関表」を使って算出します。私たちは、投下総額の大半を占める来場者の消費予想額をより丁寧に算出しており、現実に近い数値になっていると考えています。

大阪経済大学教授・下山朗さん 略歴:1978年生まれ。奈良県立大学教授などを経て現職。アジア太平洋研究所のプロジェクトにも参画している。
大阪経済大学教授・下山朗さん 略歴:1978年生まれ。奈良県立大学教授などを経て現職。アジア太平洋研究所のプロジェクトにも参画している。
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─金額が独り歩きしている印象ですが、どんな業種や会社が利益を得られるのでしょうか。

直接的に潤うのは、建設や観光業です。観光業には、運輸、宿泊、飲食、シーツやタオルを扱うリネン業なども含まれます。こうした業界に商品やサービスを提供する会社は、その規模に関係なく、受注量が増えるでしょう。一方で、みやげ物をのぞけば、町工場などの製造業には、恩恵が及びにくいと思います。

─万博開催の機運が高まっていません。なぜだと思いますか。

産業界が万博をビジネスチャンスにつなげる方法や、市民がそのために果たせる役割について、万博協会や行政機関が十分に説明していないことが一因だと思います。例えば、町工場が集まる大阪府東大阪市や八尾市、堺市などでは、地元業者が万博を見に来る外国人観光客を自社工場に招き、地元産品をアピールしようとしています。

これに対し、万博協会や多くの自治体は、万博に送り込む地元住民の人数を確保することに必死で、こうした外国人の誘客や、地元産業の対外宣伝、工場訪問体験ツアーなどのもうかる仕組みづくりに力を割けていません。