子ども無料招待の実態
大阪府知事の吉村洋文が経済効果とともに万博の意義として掲げた「次世代への投資」。その象徴と言えるのが万博への子どもの無料招待事業だろう。だが、足並みの乱れもあった。
対象は府内の小中高に通う人や、府内在住の4〜5歳児、府外の学校へ通う府内在住者など計約102万人。府内学校の小中高校生は学校ごとに校外学習として招くのを基本とし、4〜5歳児などには入場券を配る。
全員を無料で複数回招待するという方針も掲げた。1回目は府が全額(事業費見込みは約20億円)を出し、2回目以降は市町村が負担する方向性を打ち出した。府市は23年9月に市町村への意向調査を始めたが、高槻市長の浜田剛史は11月22日の記者会見で言った。
「市町村で支出するのが妥当なのか、賛否両論がある」
その2日後。吉村は2回目以降の無料招待について「市町村に予算編成権があるから市町村長の判断」としたうえで、できれば複数回を実現したい考えを示した。
複数回をめざすのは入場者数を増やすためなのかと問われると、こう否定した。
「あまりにも穿った見方ではないか」
大阪市長の横山も「かけらも思っていなくて、びっくりした。非常に広くてパビリオンも多く、1日で回れる会場ではない」と語った。
府によると、府内43市町村のうち10市町が子ども無料招待の費用負担を見送った(24年11月時点)。そのうち2市では、独自の補助を出して、無料招待と同じようなメリットが得られるようにしたという。
一方で、府教育委員会は24年4月、学校ごとの来場を基本とした府内の小中高、支援学校の計約1900校(児童・生徒計約88万人)への意向調査を始めた。
これは府が全額負担する1回目の子ども無料招待に関するものだ。来場する考えがあるかどうかや、希望する日時、会場までの交通手段について5月末までに回答するよう求めた。
交野市長の山本景は5月24日の記者会見で、「行きたいという学校は一校もなかった」と述べ、市内13校の学校単位での参加を見送ると明らかにした。